メディアドゥが4月13日に発表した2023年2月期通期の連結業績は、売上高が前年同期比3%減の1016億円だった。前期に一部書店の大型キャンペーンが実施された反動や、主要取引先のひとつである「LINEマンガ」移管が売上高の減小に影響したとしている。一方で、電子書籍市場の堅調な拡大と新規事業の成長により、先述の特殊要因を除くと売上高成長率は11%となった。
営業利益は15%減の24億円、純利益は33%減の11億円だった。電子書籍市場の堅調な拡大に向けた投資や、のれんなどの資産減損・除却が利益減小に影響した。EBITDAは39億円と第4四半期として過去最高を達成した。
なお、2024年2月期の売上高は、LINEマンガ移管による売上減の影響が継続することから、2%減の1000億円を見込む。営業利益は16%減の20億円、純利益は4%増の11億円を見込んでいるとのことだ。
決算会見の冒頭、「電子書籍流通事業に次ぐ、第二の収益の柱を確立していく」と、代表取締役社長 CEOの藤田恭嗣氏は説明した。
同社は、国内2200社以上の出版社と、150店以上の電子書店の間で電子書籍の流通事業を展開している。メディアドゥを経由することで、出版社と電子書店は一社一社と契約する必要がなくなり、複雑な商流を簡素化できる。同社によると、電子書籍流通の約36%はメディアドゥを経由しているとのことだ。
コロナ禍による巣ごもり消費も追い風となり、2019年に657億円だった連結売上高は、2021年には約1.6倍の1047億円にまで成長した。巣ごもり消費一巡後も安定的に成長が継続されている。
同社は次の一手として、デジタルコンテンツにNFT(非代替性トークン)を掛け合わせる事業展開を加速していく。偽造や改ざんが難しいブロックチェーン技術を活用することで、そのコンテンツがオリジナルであることを証明することが可能で、2次流通も促すことができる。
同社は、NFTを使ったデジタルコンテンツの収集や売買などができるサービス「FanTop(ファントップ)」を運営しており、すでに1万5000人以上の会員が利用している。一点もののアートとは異なり、需給バランスが取れているため投機目的になりにくく、また、コンテンツの売買時に受け取る手数料の一部は作家や出版社に還元される仕組みとなっている。
「当社のミッションは『著作物の健全なる創造サイクルの実現』。投機目的ではないクリエイターズファーストな仕組みを実現している」(藤田氏)
そして、リアルコンテンツである紙書籍にもNFTテクノロジーを掛け合わせる。具体的には、書店を訪れて本を購入した読者などに、数量限定のデジタルコンテンツをNFTとして付与する。例えば、写真や画像、音楽に加えて、紙本とは違うアナザーエンディングのデジタル本などだ。
2021年3月にトーハンとの資本業務提携を結んでおり、「NFTデジタル特典付き出版物」の販売を全国の書店ですでに開始している。2021年10月〜2023年3月の期間における総売上高は3億円を超え、販売単価、実売率はそれぞれ31%、32%上昇しているという。
「NFTテクノロジーによってデジタルコンテンツにも所有の概念が生まれ、流通カロリーの高いリアル本と組み合わせることにより相乗効果を生むことができる。今後は、NFTデジタル特典付き出版物の流通量をさらに増やしていく」(藤田氏)