静岡大学(静大)は4月7日、量子力学における不確定性関係を応用することで、粒子の位置とエネルギーの期待値の間に成立する制限関係の導出に成功したことを発表した。
同成果は、静大 理学部の森田健准教授によるもの。詳細は、日本物理学会が刊行する理論物理と実験物理を扱う欧文オープンアクセスジャーナル「Progress of Theoretical and Experimental Physics」に掲載された。
"ボールを投げたら落ちてくる"といった、我々のマクロな世界に存在する感覚的にわかりやすい物理法則を扱うのが、古典的なニュートン力学だ。それに対し、素粒子などのミクロな世界を扱う量子力学では、「電子がこの位置にいる確率は何%」という具合で、すべての現象が確率で表されており、これは決定論で表されるマクロな世界とは大きく異なる。
しかし、現実にミクロの世界とマクロの世界は同じ世界であり、ニュートン力学と量子力学の関係を理解することは、ミクロな世界とマクロな世界を結びつける上でとても重要だと考えられている。そこで今回の研究では、ポテンシャルに閉じ込められた粒子のエネルギーと位置の関係に注目して、量子力学とニュートン力学の関係を調べたという。
容器の中を転がり落ちるボールの運動を例に取ると、ニュートン力学では、最初にボールを置いた位置の高さによる位置エネルギーが運動エネルギーに変換され、高所にボールを置くほどボールが運動できる範囲が広くなり、エネルギー保存則として表される。
このエネルギーと位置の取り得る範囲の関係を量子力学で表すと、容器(ポテンシャル)内のボール(粒子)の運動は確率分布として記述されるため、ニュートン力学におけるエネルギーと位置の関係を、そのまま量子力学に当てはめることはできない。そこで今回は、エネルギーと位置の期待値に注目し、それら期待値の間に成立する関係を調べたとする。