立命館大学、名古屋大学(名大)、科学技術振興機構(JST)の3者は4月7日、カーボンナノチューブ(CNT)を認識するヒト免疫細胞の受容体を発見したと共同で発表した。

同成果は、立命館大大学院 薬学研究科の山口慎一朗大学院生、同・大学院 生命科学研究科の謝祺琳大学院生、立命館大 生命科学部の笠原浩太助教(現・JT医薬総合研究所研究員)、同・大学 薬学部の中山勝文教授、名大大学院 医学系研究科の豊國伸哉教授、東北大学大学院 情報科学研究科の木下賢吾教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系のナノサイエンスとナノテクノロジーの全般を扱う学術誌「Nature Nanotechnology」に掲載された。

CNTについて、その一部から動物実験においてアスベストと同様の毒性が相次いで観察されたことから、国際化学物質事務局が2019年、CNTを有害物質と判断した(実際にヒトに対して毒性があるのかはまだ明確ではない)。そのため、CNTの研究開発の継続については、国際的に大きな議論となっている。

CNTは生体内に入ると、免疫細胞のマクロファージによく貪食される。本来、マクロファージは体内に侵入した微生物などを貪食することなどにより、生体防御での重要な役割を果たしている。しかし、アスベストや一部の多層CNTを貪食した場合は、ストレスを強く感じ、そのストレス応答により慢性炎症が引き起こされるという。しかし、なぜマクロファージがCNTをよく取り込むのかは依然として不明だったとする。

そうした中で研究チームは2021年のマウス実験において、多層CNTによる炎症に対し、同CNTを認識する受容体「Tim4」が関与していることを解明。しかしその後、ヒト細胞を用いた実験から、Tim4が発現していないマクロファージでも多層CNTを認識することが確認され、ヒトではTim4以外の受容体が多層CNTの炎症に関わっている可能性が出てきたのである。

Tim4のCNT認識様式は非常に特徴的なものだ。通常はタンパク質の表面に出にくい「芳香族アミノ酸クラスター」が、Tim4の構造表面には出ており、同クラスターがCNT認識に必須だというものである。そこで今回の研究では、Tim4以外のCNT認識受容体を見つけるため、すでに結晶構造が解析済みの約15万種のタンパク質三次元構造中から、同クラスターを持つヒト受容体を探索したという。

その結果「Siglec-14」が発見され、分子動力学シミュレーションにより、同受容体とCNTが安定して結合する様子が観察された。また、その結合モデルに一致して、同受容体はTim4と同じように芳香族アミノ酸クラスターを介して多層CNTを認識することが実証された。