米Google Cloudは3月29日(現地時間)、「Google Data Cloud & AI Summit」で、新たに「Standard」「Enterprise」「Enterprise Plus」の3つの価格帯の「BigQuery Editions」など、複数のデータソリューションを発表した。これに伴い、3月30日にグーグル・クラウド・ジャパンが国内メディア向けにラウンドテーブルを開催した。

柔軟性とコスト最適化・制御が可能な新価格体系

まず、BigQuery Editonsについてグーグル・クラウド・ジャパン ソリューション&テクノロジー部門 技術部長(DB, Analytics & ML)寳野雄太氏は「より低いTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)でお客さまにデータクラウドのコンセプトを実現してもらうもの。これに加えてオートスケーリングとCompressed Storageの2つの機能を搭載している」と述べた。

  • グーグル・クラウド・ジャパン ソリューション&テクノロジー部門 技術部長(DB, Analytics & ML)寳野雄太氏

    グーグル・クラウド・ジャパン ソリューション&テクノロジー部門 技術部長(DB, Analytics & ML)寳野雄太氏

BigQuery Editionsは、ユーザーのさまざまなデータのワークロードの要求に応じて適切な価格としており、パフォーマンスの組み合わせをStandard、Enterprise、Enterprise Plusの3つのエディションで選択を可能としている。

  • BigQuery Editionsの概要

    BigQuery Editionsの概要

同氏によると、これまでコンピュートの課金に関してはデータスキャンに対する課金と定額制の課金となっており、オンデマンドは気軽に使えるもののコストの予測がしづらかったほか、定額制はDHW(データウェアハウス)の移行やミッションクリティカルなバッチ処理を行う面で好評を得ていたが、余剰分がもったいない、一時的にバッチの時間をスケールさせたいという要望があったという。

そのため新しい価格体系とし、オートスケーリングでコンピュート容量の課金に統一しつつ、ピーク時にはスケールすることができるようにしている。

  • エディションごとの概要

    エディションごとの概要

オートスケーリングはコンピュートの容量をクエリの要求により計画的・非計画的問わず調整し、BigQueryのサーバレスエンジンがクエリ動作中でも同的にリソース割当を最適化することで、定額料金よりも最大40%のコンピュートの効率性向上が見込めるという。

寳野氏は「通常、データベースはクエリを投げた時点で、どの程度のリソースを使用するのか決めてしまうため、後からコンピュートのキャパシティを追加してもスケールしていかない。しかし、BigQueryはサーバレスのデータベースエンジンのため、クエリの動作中でも動的にリソースの割当を増やしていくことができることからコンピュートの効率性が図れる。また、定額だが最大スロットを指定でき、コストの予測性が立てやすい」と説明した。

  • オートスケーリングの概要

    オートスケーリングの概要

Compressed Storageは、これまでデータは論理サイズ(非圧縮サイズ)で課金されていたが、物理サイズ(圧縮サイズ)での課金体系を新たに提供するというもの。これにより、ストレージコストを低く保ち続けることが可能となり、構造化、半構造化、非構造化データの増加をサポートする。

  • Compressed Storageの概要

    Compressed Storageの概要

AlloyDBをどこでも稼働できる機能や、そのほかの新機能

続いて、寳野氏は「BigQuery Data Clean Room」「Looker Modeler」「BigQuery Inference Engine」「AlloyDB Omni」を紹介した。

BigQuery Data Clean Room

BigQuery Data Clean Roomは、他社とデータ共有する際にプライバシー保護が重要となるため、プライバシー保護を実践しながらマーケティングキャンペーンデータをファーストパーティデータと統合し、洞察を得てキャンペーンを改善することが可能。

  • BigQuery Data Clean Roomの概要

    BigQuery Data Clean Roomの概要

データ持ち出しの防止に加え、生データを共有せずにクエリや一定数以上の集約結果のみを返すことができる。現在はプレビュー版を提供し、2023年第3四半期に一般提供の開始を予定している。

Looker Modeler

Looker Modelerは、BI(ビジネスインテリジェンス)の「Looker」で統合された信用できるメトリクス(指標)を、どのようなBI、アプリケーションでも利用可能にするものだ。

具体的には、データガバナンスを実現するために重要なレイヤであるLookerのセマンティックモデルをLooker Studio、Connected Sheetsに加え、TableauやPower BIでも利用することで異なるデータソースをブレンドした分析から洞察を生み出すという。

  • Looker Modelerの概要

    Looker Modelerの概要

寳野氏は「セマンティックモデリングレイヤとは、例えば売り上げといっても部署によっては定義が異なるものをコードを通じて統合していくものだ。今回、どのようなBIツールからでも呼び出せるようになり、一般的なSQLインタフェースとオープンなAPIフレームワークでさまざまなデータアプリケーションからセキュリティやガバナンスを効かせた形でデータが簡単に提供できるようになっている」と説く。

BigQuery Inference Engine

BigQuery Inference Engineは、あらゆるMLのインファレンス(推論)をBigQuery内で容易にできるようにする機能。

同氏は「元々、BigQueryにはBigQuery MLというSQLだけでMLモデルが作成できる機能があり、現在は数億ものMLモデルが同機能でトレーニング、デプロイされており、利用は年間200%以上増加している。ただ、構造化データ、非構造化データを含めて、さまざまなモデルをBigQuery上でインファレンスしたいという要望があり、BigQuery Inference Engineを発表した」と話す。

  • BigQuery Inference Engineの概要

    BigQuery Inference Engineの概要

新機能により、BigQuery上でSQLによる自然言語、画像の予測、翻訳が可能になることに加え、PyTorchなどのモデルをONNX(Open Neural Network Exchange)でインポートが可能となる。また、リモートモデルとしてAIプラットフォーム「Vertex AI」のモデルを利用できる。

AlloyDB Omni

AlloyDBは、PostgreSQLと互換性を持つフルマネージド型のデータベースサービス。PostgreSQLとの互換性をGoogleのインフラストラクチャと組み合わせることで、優れたスケーラビリティ、可用性、パフォーマンスを提供するというものだ。

AlloyDB Omniは、AlloyDBのテクノロジーをデータセンターやノートPC、そのほかのクラウドでも稼働できる機能。ダウンロード可能なコンテナとしてパッケージ化し、開発者がオンプレミスやパブリッククラウド上で稼働できる。現在はテクノロジープレビュー版として提供している。

  • AlloyDB Omniの概要

    AlloyDB Omniの概要

なお、2023年7月5日からBigQueryのユーザーは、年間・月間定額、Flex Slotsコミットメントを購入できなくなる予定。既存の定額料金を利用の既存ユーザーは、ビジネス要件にもとづいて定額およびフレックス キャパシティを適切なエディションに移行し、ニーズの変化に応じてエディション階層を移行することができるという。また、BigQueryはサーバレス機能、クエリパフォーマンス、機能改善を考慮し、同日からすべてのリージョンでオンデマンド分析モデルの価格を25%値上げする。