また、このモデルから生成される地球のような惑星は、月の形成時期、水が豊富な微惑星が早期に集積すること(地球の水の起源)、水の少ない小惑星が遅くまで集積しない、といった重要な観測的制約を満たしているという。

これらの理由から、今回のモデルは地球型惑星の軌道や質量、小惑星帯の主要な性質など、太陽系内部で見られる観測的制約の多くを同時に再現可能であることが明らかにされたが、ほかにも以下の点が明らかになったとする。

  • 月を形成した巨大衝突が、太陽系誕生後約6000万年以内に起こったこと
  • 地球形成の最初の1000万年~2000万年の間に水が獲得されたこと
  • 円盤の日心距離2天文単位以内に形成された天体によって、地球型惑星が後期重爆撃を受けたこと
  • 小惑星帯の軌道構造、分光学的分類、また質量が小さいこと

研究チームはさらに、小惑星帯形成の新しいモデルとして、地球型惑星形成後約40億年の進化を経て、生き残る局地的な小惑星、および捕獲された小惑星との混成も提案している。局地的な小惑星とは、円盤内天体のカオス的な励起により円盤内の天体が枯渇した後の残骸のことだ。また、捕獲された小惑星とは、円盤が不安定になった後に木星以遠にある天体が貯蔵された領域から集積したものを示すとする。

このモデルは、小惑星帯が持つ特徴である、小さな質量、軌道分布、S型・C型・D/P型という3つの主要な分光学的集団の組成分類を再現することが可能だとしている。また、太陽系の内側で発生した重爆撃は、地球型惑星形成の最終段階において、水の少ない小惑星の残骸によって引き起こされた可能性も示唆されたとする。

以上から、太陽系内部の形成過程に関して新しい力学モデルが提唱されたことを意味するとした。