ソフトバンクは3月17日、交差点の右折時に衝突の危険がある車両のドライバーに対し、スタンドアローン方式による「第5世代移動通信システム」(5G SA)および「セルラーV2X通信システム」(セルラーV2X)を活用して音と表示で報知するシステムを開発し、クルマの交差点右折時の事故低減に向けたユースケースの検証を実施し、その有用性を確認したことを発表した。
なお今回の検証はスズキの協力を得て行われ、同社が研究開発を行うテストコース「相良コース」に設置されたソフトバンクの5G SAの実験用基地局と、V2N(車両-基地局間通信)やV2V(車車間通信)などの通信技術と、スズキの車両および車両技術が活用された。
またV2Vに関しては、国際的に割り当てが検討されている5.9GHz帯の電波の実験試験局免許を取得して、5G SAと同様に相良コースに通信環境を構築し、国内で先行して検証を実施したことも併せて発表された。
今回想定されたのは、クルマが交差点を右折する際に、対向車線に右折車両が存在し見通しが悪く、対向車線を走る直進車両が目視およびセンサで検知できないシーンである。そして、ドライバーに対向車線の直進車の存在を通知することで、右折時の衝突事故(右直事故)を防止することが目的とされた。
今回のシステムは、交差点付近にいる車両がV2Nを活用し、定期的に位置情報や車両情報などをマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)サーバーへ送信するところから始まる。MECとは、基地局など端末から近い位置にデータ処理機能を配備することで、クラウドサーバーと比較して通信の最適化や高速化を実現できる技術のことだ。
MECサーバー側で受信された各車両情報と地図情報はひも付けられ、管理される。さらにMECサーバーは、こうして集約された車両情報を基に衝突判定を実施。そして衝突の危険があると判断された場合は、その結果が対象の車両へ送信され、車両のドライバーに対して音と表示で警報通知を行う。
衝突回避などの運転支援システムは、カメラやレーダなどの車載センサを使用した車両のみで完結するシステムが一般的だ。しかし、今回の検証の結果、5G SAや車車間通信を活用したシステムでも十分に有用性があることが確認できたとする。
ソフトバンクは、今後もより安全な移動社会の実現を目指し、5G SAやセルラーV2Xなどを活用した事故低減に向けたユースケースの検証に関する取り組みなど、研究開発を進めていくとしている。