東京工業大学(東工大)は3月16日、宇宙システム新規技術「折り紙構造による超高利得展開リフレクトアレーアンテナ技術の宇宙実証」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマに選定されたことを発表した。

今回の提案技術は、東工大 工学院 機械系の坂本啓准教授を代表者とした、同・工学院 電気電子系の戸村崇助教、同・岡田健一教授、東工大 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の白根篤史准教授らの共同研究チームによるもの。

JAXAの革新的衛星技術実証プログラムとは、宇宙基本計画上の「産業・科学技術基盤を始めとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化」の一環として、大学や研究機関、民間企業などが開発した部品・機器・超小型衛星・キューブサットに宇宙実証の機会を提供するものだ。革新的衛星技術実証4号機はその4回目であり、2024年度の打ち上げが予定されている。今回は6件のテーマが選定されており、東工大のテーマは、キューブサット区分として選定された3テーマのうちの1つだ。

日本政府が提唱するSociety5.0の実現においても、小型衛星群を用いた大容量通信網の構築が期待されているが、小型衛星では質量と打ち上げ容積が強く制限されるため、宇宙で大電力・大容量通信を可能にするにはまだ技術的な課題があるという。ただし、小型衛星に大型アンテナを搭載できれば、以下の3点のメリットを得られ、新サービスの実現や既存サービスの革新的発展が期待できる可能性がある。

  1. 地球周回衛星通信網の大容量化
  2. 高頻度地球観測を実現する小型合成開口レーダー(SAR)衛星コンステレーションのさらなる低コスト化と高解像度化
  3. 小型深宇宙探査機への大型アンテナ搭載による通信距離・容量の増大

アンテナは、開口面積が大きいほど通信速度の向上や通信距離の拡大、観測データの高解像度化が可能になる。しかし、従来はアンテナ面が高い形状精度を持つことを前提としており、結果として軽量化・高収納率化が阻害され、大型化が難しかったという。

そのような課題を踏まえて研究チームは、アレーアンテナ面を剛性が著しく低い膜面で構成し、あえて高い平面度を要求しないというアプローチにより、積極的にアンテナを軽量化・高収納率化して大面積化する技術を開発。今回の技術実証ではまず、地球観測で広く用いられ、アマチュア無線帯でもあるC帯(5.8GHz)でのアンテナ利得向上を実証するとしている。

そして、3Uサイズ(10cm×10cm×34cm)のキューブサット「OrigamiSat-2」(4kg)を開発し、そこに搭載される。同機では2層式展開膜を用いた、軽量・高収納率の展開リフレクトアレーアンテナ構造物(50cm×50cm)を軌道上で展開し、高利得アンテナ性能を実証するという計画だ。

  • OrigamiSat-2のイメージ。同衛星は3Uキューブサットで、打ち上げ時のサイズは10cm×10cm×34cm。軌道上で50cm×50cmの膜アンテナおよび1mの姿勢安定用マストを展開する

    OrigamiSat-2のイメージ。同衛星は3Uキューブサットで、打ち上げ時のサイズは10cm×10cm×34cm。軌道上で50cm×50cmの膜アンテナおよび1mの姿勢安定用マストを展開する(出所:東工大プレスリリースPDF)