岩手大学は3月6日、研究用動物として利用されているマウスの妊娠環境を、音波振動を用いて瞬時に作り出す技術を開発し、同技術を用いてゲノム編集マウスを作出することに成功したと発表した。
同成果は、岩手大 理工学部の金子武人准教授、動物繁殖研究所の共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
妊娠環境が整った雌の卵管や子宮に受精卵を移植し産子を誕生させる受精卵移植技術は、ヒトの不妊症治療、産業動物の計画生産、ゲノム編集動物の作出および凍結保存された受精卵からの個体作出などに、幅広く利用されている。
ヒトを含めた動物の妊娠の維持には、卵子の排卵後に形成される黄体の存在が必要で、これは別個体の受精卵を移植する場合も同様だ。マウスなどのげっ歯類の場合、形成された黄体は急速に退行してしまうが、雄との交尾刺激により存在期間が長くなり、妊娠が維持されるという特徴がある。そのため受精卵を移植する場合は、妊娠環境を作り出すために必ず雄と一晩同居させることが必要とされてきた。しかし、一晩同居させてもその雄雌が交尾するとは限らず、その結果として雌の妊娠環境が構築されず、受精卵移植を中止することも多くあるという。
そうした中、2020年に同じげっ歯類のラットにおいて、音波振動を用いて雄の交尾刺激を人工的に再現し、妊娠環境を確実に作り出すことに成功したのが研究チームだ。今回の研究では、人工的に雌の妊娠環境を構築する技術がまだ存在しないマウスに対し、ラットで開発された技術を応用することにしたという。