東京理科大学(理科大)は3月6日、全固体リチウム電池(LIB)の充電速度に加速・減速効果を与える中間層を発見し、界面から厚さわずか数オングストローム(Å)以下の電解質組成で「電気二重容量」(CEDL)を制御できることを示したと発表した。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要(出所:理科大Webサイト共同プレスリリースPDF)

同成果は、理科大 理学部第一部応用物理学科の樋口透准教授、理科大大学院 理学研究科の高栁真大学院生(研究当時)、物質・材料研究機構(NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の土屋敬志主幹研究員、同・寺部一弥MANA主任研究者らの共同研究チームによるもの。詳細は、材料の物理学を扱う学術誌「Materials Today Physics」に掲載された。

電極と固体電解質などの異なる層が接する界面は、全固体LIBやキャパシタなど、さまざまなデバイスの電気特性を決定づけることから、その構造設計が重要だ。電極/固体電解質のような異なる層の界面の近傍には、正または負の電荷や電解質イオンが並ぶことで自発的に薄い2層構造が形成される。同層を「電気二重層」といい、その形成が電子物性に与える効果のことを「電気二重層(EDL)効果」と呼ぶ。

EDL効果は、リチウムイオン輸送における高い界面抵抗の要因の1つであり、全固体LIBの充放電特性に大きな影響を与えることがわかっている。しかし、固体/固体界面における詳細なEDL構造についてはまだ不明な点も少なくなかった。

そうした背景の下、EDLトランジスタ(EDLT)とホール測定を用いることで、電極近傍で静電的に発生するEDL電荷の有無を検出する新しい実験手法を2021年に開発したのが、研究チームだ。同手法により、電極界面から5nm以下の領域では、EDL効果が電解質組成に強く依存することが解明された。つまり、電極/固体電解質界面に特定の電解質を挿入することによって、EDL効果を抑制できることがわかったのである。なお全固体LIBでも、電極/固体電解質界面への中間層を挿入することによってユニークな現象が生じることが確認されているという。このような界面物性の解明は、全固体LIBをはじめとする固体電解質を用いたデバイスの開発において重要だとする。

そこで今回の研究では、そのような界面物性の解明を目指し、水素化ダイヤモンド(H-diamond)ベースのEDLTとリチウム固体電解質(Li-Si-Zr-O)を用いて、固体/固体界面におけるEDLの厚さとCEDLについての検討を行うことにしたという。