あらゆる業務にデジタル化の波が押し寄せているが、中でも経理部門では2022年1月に改正となった「電子帳簿保存法」、そして2023年10月に始まる「インボイス制度」への対応も迫られており、担当者がやるべきことは山積みだ。2月16日に開催された「TECH+セミナー 経理業務変革 Day 2023 Feb. 税制改正への対応と業務変革」では、SKJ総合税理士事務所 所長で税理士の袖山喜久造氏が登壇。「経理業務のDX化に係る法的対応」と題し、経理業務のDXと各種法対応を両立させながら進めていくためのポイントを解説した。
電帳法が持つ2つの側面
経理がデジタル化や電子化を進めるにあたって重要になるのが「電子帳簿保存法(以下、電帳法)」だ。これは2023年10月から開始されるインボイス制度とも関連しており、「データによるインボイス(適格請求書)の発行などができるようになるが、そこでも電帳法の対応が必要になる」と袖山氏は言う。
電帳法は、税法で保存が必要な帳簿や書類をデータで保存する「保存方法の特例法」という側面と、データで取引情報をやり取りする場合にそのデータを保存しなければならない(電子取引)という「電子取引データの保存義務規定」の2つの側面がある。講演では、この2つの側面を踏まえた上で、経理業務におけるDXの要点が解説された。
経理業務DXの「3つのポイント」
袖山氏によると、デジタル社会を見据えた経理業務のDXを進めるにあたって検討すべきポイントは3つある。
1つ目は業務処理の電子化だ。経理業務のデジタル化と言うと電帳法の対応に目が行きがちだが、「本来の目的はデータを活用して業務処理をいかに効率化、適正化するか」だと同氏は指摘する。
そのための1つの方法が、RPAを使った処理の自動化、AI/OCRによる自動入力などの含むワークフローシステムの導入だ。
「誰が・いつ・どういう申請をして、誰がチェックをして承認をしたか、このような記録が残ることで業務処理の管理が電子化でき、効率化も図れます」(袖山氏)
2つ目は証憑保存の電子化である。ここでは見積書、契約書、発注書、納品書、請求書などのさまざまな書類をどのようにしてデータで保存するのか、一元管理できる方法を検討することになる。そこで必要になるのが、電帳法への対応だ。
電帳法では、電子取引におけるデータ保存だけでなく、紙で回収・発行した書類のスキャナ保存についても規定している。袖山氏は、この電帳法の要件を満たした文書管理機能を持つシステムとして、日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証するJIIMA認証を紹介。国税庁のWebサイトでもJIIMA認証製品を公開していると補足した。
3つ目は取引書類の授受方法の電子化である。1つ目、2つ目は社内で検討できる事項だが、書類の授受となると取引先が関係してくる。取引書類の電子的なやり取り自体は、コロナ禍で浸透したものの、メールに添付した状態で回覧されているケースが多いが、効率は良くない。メールではなくクラウドなどを活用することも検討が必要だ。また、インボイス制度では、請求書発行を電子的に行うことを推奨している。これらを踏まえ、「請求書の発行から授受、その後の処理までを考えた業務効率化を検討すべき」だと同氏は語る。
紙とデータが混在する中でインボイス制度に対応するにあたっては、特に、受け取る側が紙をスキャンして保存し、電子取引データと共に保存・管理するような文書管理システムを使って一元管理することも可能だ。このような文書管理システムと経理ワークフローが自動で連携するようになっていれば、保存漏れや入力ミスなどを防ぐことができる。また、電帳法で求められる訂正削除の履歴の保存にも対応できると袖山氏はアドバイスした。