多くの企業が「お客さまのための顧客体験向上」をミッションやパーパスに掲げているが、その達成が容易ではないことは言うまでもない。日本において、顧客体験価値(CX)の高さでよく名前が挙がる企業と言えば、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドだ。では、同社のCXの高さはどこから生まれているのだろうか。
2月21日、22日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 DX Frontline for Leaders 変革の道標」に、東京ディズニーリゾートでゼネラルサービス部長、カストーディアル部長、ディズニーランド運営部長、ディズニーシー運営部長、ディズニーリゾート運営部長を歴任し、現在はチャックスファミリー 代表取締役を務める安孫子薫氏が登壇。「『ディズニーの現場力』~高い顧客体験価値(CX)を提供し続ける秘訣~」と題し、講演を行った。
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多数のファンを生み出す要因はCXを高める3つの要素
2023年4月で開園40周年を迎える東京ディズニーリゾート。累計8億1000万人が訪れている同パークは、なぜこれだけ多くの人に愛される施設になったのか。安孫子氏は、立地条件や時代背景といった外的要因のほかに、世界観を徹底した高品質でスケールの大きいエンターテインメントパークであること、独自のマーケティング戦略といった内的要因があると分析する。
中でもCXに直結する内的要因が「ディズニーフィロソフィの浸透」「パーク運営力(現場力)」「ホスピタリティの実践」だ。これらを分解すると、「パークコンテンツ」と「心地良さ/景観・雰囲気」、そして「キャスト(従業員)」となり、これら3つが常に高い品質でディズニーの世界観にしっかりとマッチしていることが「CXを高めている」と安孫子氏は言う。
CXにつながるのは「フィロソフィの浸透」と「EX向上」
高い現場力が発揮された出来事として、同氏が取り上げたのは東日本大震災発生時のパーク内での対応である。キャストが自主的に行動し、大きな称賛を得ることとなったのは、「経営層からキャストまで共感・共有している考え方、ディズニーフィロソフィがある」(安孫子氏)ためだ。オリエンタルランドではキャストのミッションはただ1つ「ハピネスの提供」であり、その達成に向けた「ホスピタリティ・ガイドライン」やキャスト教育プログラム、「スーパービジョン・システム」と呼ばれるマネジメント機能などが用意されているという。
また、キャスト間で感謝を伝える「プラスストローク」や、モチベーションを上げ、エンゲージメントを高める施策によって、エンプロイーエクスペリエンス(EX)の醸成・向上ができているという。安孫子氏は「これらの考え方や仕組みが、CXにつながるEXを生み出している」と強調し、「これがディズニーの現場力を高めている背景」だと総括した。
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