福島県立博物館ならびに北海道大学(北大)は2月16日、2005年にアメリカ自然史博物館がモンゴルから発見した、世界でも最上級の保存状態のヨロイ竜類恐竜「ピナコサウルス」の化石の詳細な研究を行った結果、これまで不明だった恐竜類(鳥類を除く)の呼吸・発声に関わる、気管の入り口となる器官の「喉頭」が保存されていることを発見したことを発表した。

また、100種類におよぶ現代の爬虫類・鳥類の喉頭との調査比較を行った結果、ピナコサウルスと鳥類に数多くの類似点が見出され、恐竜類でも鳥類のような発声を行っていた可能性が示唆されたことも併せて発表された。

同成果は、福島県立博物館 学芸員兼北大大学院理学院 大学院生の吉田純輝氏(現・福島県立博物館 学芸員)、北大 総合博物館の小林快次教授、アメリカ自然史博物館のマーク・ノレル博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の生物学を扱うオープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。

動物の進化において、言語や歌は高度で画期的な音声コミュニケーションと考えられており、その研究対象として、ヒトや鯨類などに加え、鳥類も重要視されている。鳥類の発声メカニズムは、ほかの四足動物とは異なり、肺から出た空気が気管支付近の声帯(鳴管)を振動させ、気管そして喉頭を通って行われる。

しかし、この鳥類に特徴的な音声器官とその進化について、鳥類および爬虫類の化石研究は極めて少ないという。鳥類は恐竜から進化してきたとされているが、その祖先である恐竜の喉頭の化石はこれまでまったく知られておらず、そのため、恐竜の音声について手がかりとなる研究は存在しなかったとする。そこで研究チームは今回、世界でも最上級の保存状態とされる、アメリカ自然史博物館が所有するピナコサウルスの標本を用いることにしたという。

ピナコサウルスは、今からおよそ8400万~7200万年前の中生代・白亜紀に棲息していた四足歩行の植物食恐竜。背中を覆う装甲板のような皮骨が、ヨロイのように身を守っていることを大きな特徴とする。今回の標本は世界でも最上級の保存状態にあり、ほとんどの骨がつながった状態の化石として知られている。