Indeed Japanは2月7日、同社が提供する検索エンジンであるIndeedに登録された履歴書データと求人情報のクリック・データに基づき、現職からどの職種カテゴリに関心を示しているかを分析したレポート「職種間の転職意欲の動向:どの職種からどの職種へより転職意欲があるのか?」を公開した。これによると、影響を与える要素は同職種への転職と異職種への転職で異なる傾向にあることが分かった。

履歴書カテゴリと関心先である求人職種カテゴリのクリック割合をマッピングしたところ、業務内容が大きく異ならない(親和性の高い)職種カテゴリ間での転職意欲は高くなるが、事務は異職種からの関心以上に事務内部からの関心が強いため、事務には関心が集中しやすい傾向にあることが判明した。

看護は、異職種からの転職障壁がある一方で、他の転職障壁がある職種カテゴリ(医療・ソフトウェア開発・金融関連)と比べると、履歴書登録件数が多いため同職種での転職意欲が相対的に高くなっている。しかし、看護に従事する求職者からの他の職種への転職意欲は低く、同職種での転職意欲が高い。

  • 履歴書登録者の職種カテゴリごとの関心マップ 出典: Indeed Japan

同職種クリック率と異職種クリック率を算出し、パンデミック(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大)前後で比較すると、同職種クリック率は、看護では50%を超えたのに対して、看護以外では50%を下回った。

ただし看護も、2020年の特にコロナが深刻だった時期には同職種クリック率は下がっており、この時期に看護の仕事が特にハードとなり、異職種への関心が相対的に増えたためと同社は推測する。

異職種クリック率は、看護、事務、運送などで相対的に低い傾向だった。これらの職種が現職である求職者は、求職先も同じ職種にこだわることが多いことを示しているという。

  • 同職種クリック率と異職種クリック率の定義 出典: Indeed Japan

  • 看護の同職種クリック率 出典: Indeed Japan

  • 事務・看護などへの異業種クリック率 出典: Indeed Japan

採用企業の労働環境の違いが、異職種への転職意欲に加えて同職種内の転職意欲にも影響する可能性があるという。

例えば看護で異職種クリック率が小さく同職種クリック率が大きい原因の1つとして、他の職種からの参入障壁が高いことを挙げる。これは、看護従事者からみると、異職種への転職は取得した資格や職務経験を活かせなくなる機会損失があり、その機会損失が相対的に大きいことが同職種クリックを大きくすると同社は見る。

また、労働環境の良し悪しも原因の1つだと考えれるという。特に、履歴書登録件数もクリック件数も多い転職意欲のある職種で同職種クリック率が高ければ、同じ職種でも違う職場でより良い労働環境を求めていると同社は推測する。

このような原因がデータから見えてくるか確認するため、各履歴書カテゴリにおいて、「残業なし」あるいは「夜勤なし」かどうかで、より同職種クリックが増えているどうかを分析した。

その結果、職種カテゴリの約8割で、同職種内のクリックにおいてタグ「残業なし」「夜勤なし」のある求人をクリックする割合が、タグ「残業なし」「夜勤なし」のある求人割合を上回っている。

最もその差が大きい法律・法務の職種カテゴリでは、同職種クリック率の21%が「残業なし」「夜勤なし」の求人に向いており、これはこれらのタグが法律・法務の求人の9.6%にしか記載されていないことを考えると非常に高い数字だという。

同様に看護においても、同職種クリック率の17%が「残業なし」「夜勤なし」の求人に向いており、これらのタグが看護の求人に記載されている割合である12.7%を上回っています。

これらにより、「残業なし」「夜勤なし」の労働環境は、少なからず同職種での転職意欲に影響を与えていると同社は見る。

  • 残業なし/夜勤なし求人の同職種クリック率 出典: Indeed Japan

同社Hiring Labのエコノミストである青木雄介氏は、「参入障壁が高い職種カテゴリで、異職種からの関心を増やすのは特に難しい問題です。社会的にリスキリングがより進めば、異業種への転職意欲が変わる可能性はあるかもしれません。また企業側が経験のある即戦力を同職種から採用したいと考える場合には、より良い労働環境を整えることが1つの鍵となるでしょう」とコメントしている。

また、履歴書カテゴリの配分は、上位から小売(19%)、事務(15%)、製造(7%)、営業(6.4%)、介護(3.8%)、飲食(3.3%)だった。マーケット上のカテゴリ分布については利用可能なデータソースが乏しく把握困難な状況だったため、参考値として2022年の求人データの職種カテゴリの配分と比較した結果、両者の配分は大きくずれていないことを確認したとのことだ。

  • 職種カテゴリ別の履歴書割合の比較 出典: Indeed Japan