
業界再編に国が どこまでかかわるべきか
官民ファンドのINCJが、経営再建が続く中小型液晶パネルメーカーのジャパンディスプレイ(JDI)の全株式を売却した。これまでINCJは前身となる産業革新機構の時代から合計7回、4620億円を投資してきたが、回収できたのは3073億円(金融収益含む)。1547億円の損失が確定したことで、改めて、国の責任を問う声が高まっている。
JDIは2012年に、経済産業省が所管する産業革新機構の主導で発足。ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶事業が統合し、産業革新機構が70%、民間3社が10%ずつを出資して誕生した。
ただ、その後は韓国や台湾、中国などの競合が台頭し、価格競争が激化。また、液晶に続く有機ELへのシフトにも出遅れ、ここまで同社は10年連続の赤字。今期(25年3月期)も赤字となる見通しで、3月17日の株価は17円と、公募価格の900円に達したことは一度も無い。
こうした状況下での、INCJによるJDIの全株式売却。
INCJ会長の志賀俊之氏は「13年間リスクを取って投資してきた結果とは言え、累計投融資額に対して66%の回収に留まり、会長として申し訳なく思っている」とコメントした。
国主導の産業政策を巡っては、2015年にソニーとパナソニックの有機EL事業を統合し、産業革新機構の主導でJOLED(ジェイオーレッド)が発足したが、23年に破綻。12年には当時の産業活力再生特別措置法(産活法)の認定を受け、公的資金を投じた半導体のエルピーダメモリが破綻している。
現在は「経済安全保障」の旗のもと、次世代半導体の製造を目指すラピダスへ、すでに合計9200億円の政府出資が決まっている。このため、「ラピダスもエルピーダやJDIの二の舞になるのではないか?」との懸念も強く、産業政策の失敗の責任は誰が取るのか、そして、業界再編に国がどこまでかかわるべきか、今後も問われそうだ。