生理学研究所(生理研)、生命創成探究センター(ExCELLS)、池田模範堂、昭和大学、京都薬科大学(京薬大)、立命館大学の6者は1月31日、皮膚にできた傷が治癒する際に、温度感受性TRPチャネルの1つである「TRPV3」が、同じ細胞にあるクロライドイオンチャネル「ANO1」の活性化を介して表皮細胞の増殖・移動を促進し、傷口を埋めることを明らかにしたと発表した。
同成果は、生理研の富永真琴教授(ExCELLS兼任)、池田模範堂の山野井遊博士、昭和大 医学部の髙山靖規講師、京薬大の細木誠之准教授、立命館大の丸中良典客員教授(京都工場保健会総合医学研究所 所長兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の生物学を扱うオープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。
擦り傷や切り傷などで皮膚が傷つくと、皮膚の表面を覆う表皮細胞が削り取られてしまい、その下にある真皮と呼ばれる敏感な組織が露出することで痛みを感じる。また、真皮には無数の血管があるため、傷の度合いによってはそれらが破けて出血も伴う。このような傷が治癒していく過程においては、その周囲に残った表皮細胞が増殖して傷口を覆うように移動することが理解されている。
これまでの研究で、この表皮細胞の増殖・移動にTRPV3が関わることはわかっていたが、どのように細胞の機能を制御するのかは不明だったという。そうした中研究チームは、ほかのTRPチャネル(TRPA1やTPRV1)が同じ細胞内にあるANO1を活性化することを見出した。しかし、TPRV3とANO1の関係や、ANO1やクロライドイオンと傷の治癒の関係は解明されていなかったとする。しかし、表皮細胞にはTRPV3もANO1もあることから、研究チームは今回、TRPV3の活性化がANO1の活性化を誘導する可能性について検討することにしたという。