千葉大学は1月27日、酸化ジルコニウム(ZrO2)とニッケル(Ni)からなる光触媒を用いた二酸化炭素(CO2)光還元反応の機構を検討した結果、ZrO2表面で酸素原子を失ったサイト(以下、□サイトと表記)がCO2を捉え、紫外可視光の力で一酸化炭素(CO)に変え、COをNiに受け渡してメタン(CH4)を生成することを明らかにしたと発表した。

  • 光反応システム(リアクター部分)。触媒(左)に光照射(右)

    光反応システム(リアクター部分)。触媒(左)に光照射(右)(出所:千葉大プレスリリースPDF)

同成果は、千葉大大学院 融合理工学府の原慶輔大学院生、同・平山瑠海子大学院生、同・大学院 理学研究院の二木かおり助教、同・泉康雄教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するナノ・低次元・バルク材料の物理化学を扱う学術誌「The Journal of Physical Chemistry C」に掲載された。

カーボンニュートラルへの関心が高まる昨今、CO2を吸収して再資源化するための研究が世界中で進められている。その際に注意すべきは、再資源化のためのエネルギーを生み出すのにCO2を発生させてしまっては本末転倒だということだ。そのため、そのプロセスには再生可能エネルギーを用いる必要があり、また燃料に戻す過程で必要な化学反応を起こすための薬品や機器などが、可能な限り安価である必要もある。

太陽光発電は、再生可能エネルギーの代表的存在だ。地球が太陽から受け取っている光エネルギーは全放射量に比べるとわずかだが、それでも1時間あたりの総量は、人類が1年間に消費する全エネルギーに匹敵するほどである。つまり、人類は地球に届いている分の大部分を活用できていないことになる。また、日本で導入が進む現行の太陽電池は、重量があって固く、設置場所が限られてきているとされる。そうしたこともあり、太陽光をさらに有効活用する手段の1つとして、光反応システムのさらなる効率化が求められていた。

研究チームはこれまでの研究で、ZrO2とNiとを組み合わせた光触媒として、CO2から光触媒1グラムあたり毎時0.98mmol(ミリモル)のCH4を生成する、世界最高レベルの触媒活性を開発することに成功している。しかしその開発の中で、ZrO2を用いた時はCO2からCH4が選択的に得られるのに対し、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)を用いた時には不純物からのCH4が多く見られる点が、大きな謎になっていたという。そこで研究チームは今回、その謎の解明を目指すことにしたとする。