慶應義塾大学(慶大)、順天堂大学、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)、青山学院大学(青学)、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ、科学技術振興機構(JST)の6者は1月26日、ヒトの腸内細菌の1種である「バクテロイデス ユニフォルミス」(B.ユニフォルミス)が持久運動パフォーマンスを向上させること、また、この腸内細菌が栄養源として利用しやすい環状オリゴ糖「α-シクロデキストリン」を摂取することで、ヒトの持久運動パフォーマンスも向上できることを明らかにしたと発表した。

同成果は、慶大 先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授(順天堂大大学院 医学研究科 細菌叢再生学講座の福田真嗣特任教授/KISTEC 腸内環境デザイングループ グループリーダー/JST ERATO副研究総括兼任)、アサヒクオリティーアンドイノベーションズの森田寛人研究員、同・狩野智恵研究員、青山学院大学の内山義英教授、同・原晋教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国科学振興協会が刊行する「Science」系のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載された。

ヒトの全身の細胞はおよそ37兆個と見積もられているが、ヒトの腸管には、それよりも多いおよそ40兆個の腸内細菌が棲息していると推定されている。腸内細菌で構成される微生物集団は腸内細菌叢または腸内フローラと呼ばれ、その種類やバランスなどがヒトの健康や疾患に大きな影響を与えていることがわかってきている。

加えて、最近ではヒトの運動能力にまで影響を与えていることが確認されてきており、トップアスリートの腸内細菌叢は、そうでない人々よりも多様性に富んだ腸内細菌で構成されていることなどが報告されている。とはいえ、個々の腸内細菌による運動パフォーマンスへの関与やメカニズムなどは、まだわかっていることは限られている。

そこで研究チームは今回、青山学院大学陸上競技部(長距離ブロック)に所属する48人の男性学生(以下、アスリート群)と、同年代の一般男性10人の協力を得て、腸内細菌叢の比較調査を行うことにしたという。