地球温暖化による自然災害の多発にともない、温室効果ガスの削減は人類の喫緊の課題となってきている。企業側は温室効果ガスの削減を、これまでCSR(Corporate Social Responsibility:社会的責任)として取り組んできたが、最近では企業取引の条件の1つになりつつある。

そこで、約20年前からESG(環境、社会、ガバナンス)に取り組んでいるデル・テクノロジーに、カーボンニュートラルへの取り組みについて聞いた。

デル・テクノロジーズ Japan CDO Office ESGエンゲージメントジャパンリード 松本笑美氏は、最近の顧客やパートナーの環境問題への意識の変化について、次のように語った。

「気候変動への対応について、お客様から話題の出ないことがなくなってきています。企業が気候変動にどう対応しているかを気にしている点は肌で感じています。グリーン購買の基準を設けようしている顧客が昨年から増え始めています」(松本氏)

  • デル・テクノロジーズ Japan CDO Office ESGエンゲージメントジャパンリード 松本笑美氏

2020年10月、菅総理大臣は所信表明演説において、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言したが、同社も2050年までにScope1、2、3において温室効果ガス排出をネットゼロにすることを目標に掲げている。

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること。そして、Scope1は、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、Scope2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、Scope3は Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)(環境省のWebより)。

Scope3は、さらに15に分類されている。

  • Scope3の分類(環境省サプライチェーン排出量算定の考え方 パンフレットより)

デル・テクノロジーズでは、Scope1については2030年までに事業活動の排出量を50%削減、Scope2については2040年までに100%再生可能エネルギーの使用に変更し、Scope3については2030年までにサプライチェーンの販売単価あたりの排出量を60%削減することを目標に掲げている(削減比はいずれも2019年度比)。

  • デル・テクノロジーズの温室効果ガスのグローバルでの削減目標(ムーンショットゴール)

同社の場合、もっとも大きな温室効果ガスの排出量は、販売された製品の利用によるもので、全体の約2/3を占める。次がサプライチェーンから購入した製品やサービスによるもので、全体の1/4程度になる。

  • 各カテゴリーの温室効果ガス排出の割合

「この2つの温室効果ガスの削減がわれわれにとっての2大テーマとなっており、この2つで90%以上になっています。Scope1、2も重要ですが、Scope3をどうしていくのかが大きな問題になっています。まずは、サプライチェーンの排出量を減らすということに着目しており、今年は、第一次サプライヤーに対して共通のプログラムとしてCDPレポートを提出していただくように準備しています。それにより、より正確な数値を開示し、減らすためのプログラムを適用していきます」(松本氏)

CDPは、国際的な環境非営利団体(Carbon Disclosure Project)。企業に、気候変動への取り組みや排出量データの開示を求める。

同社が温室効果ガスの削減に取り組んで中でもっとも注力している施策は、リサイクルパーツの利用促進だという。

「再生プラスチックを利用することで、(新品のプラスチックを使うことに比べ)CO2が12%ほど削減できます。他の部材の鉄やアルミニュウムもリサイクルを利用していくようにしていかなければならないと思っています。製造工程においても、いかにCO2排出量を抑えられるような行動をするかということですが、自社内では再生エネルギーの利用を100%にするようにしていきたいと思っています。製造業の立場でいうと、パーツを次の製品のために取ることができるかが大きいと思います。弊社では、航空産業から排出されるカーボンファイバーをラップトップのカバーの中で利用しており、ラップトップの再利用率は71%になっています。これを100%に高めていけるよう努力しています。新品の部品を使うと、結果的に化石燃料を多く使うことになり、このような取り組み(リサイクルパーツの利用)を行うことで、間接的にCO2を削減することにつながっていくと思います。また、これはマーケットに対する優位性になると考えています」(松本氏)

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