NECは12月22日、カーボンニュートラル関連事業の一環となる「リソースアグリゲーション事業」の取り組みに関する記者説明会をオンラインで開催した。

説明会では、「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」(NEC RAクラウドサービス)から、自家用発電設備を用いて発電した電力を別の場所に供給する「自己託送(じこたくそう)」支援サービスの提供が発表された。提供開始時期は2023年4月から、提供価格は15万円~(月額、初期費用は別途)となる。

同社は2019年から、太陽光発電設備や蓄電システムなどの分散するエネルギーリソースをICTで統合制御するNEC RAクラウドサービスを提供している。

  • 「NEC RAクラウドサービス」に追加された自己託送の支援サービス

    「NEC RAクラウドサービス」に追加された自己託送の支援サービス

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AIで発電/需要量予測や自己託送計画の作成・提出などを支援

脱炭素に向けて、再生可能エネルギー発電や蓄電設備の普及・利用拡大が進む中、企業や自治体では太陽光発電設備などを設置し、発電した電力を自家消費や別拠点へ託送する自己託送の取り組みが注目されている。

しかし、自己託送を行う際には複雑なオペレーションが発生する。例えば、需要量や発電量の計画値の提出を義務付けている「計画値同時同量」制度の下で、「30分間に消費される電力量」と「30分間に発電する電力量」を一致させるほか、需要計画と需要実績間または発電計画と発電実績間の差分であるインバランスを管理する必要がある。

NECが提供する自己託送支援サービスでは、自己託送を企業や自治体が行う際に必要となる、需要・発電予測、電力広域的運営推進機関への自己託送計画の作成・提出、自己託送当日のインバランス管理およびインバランス抑制のための制御機能をクラウドで提供する。

  • 自己託送の支援サービスでできること

    自己託送の支援サービスでできること

NECは2016年から経済産業省のリソースアグリゲーション実証事業に参画し、エネルギーリソースに対する制御技術や需要予測などにおけるAIの研究開発を進めてきた。2021年からは、NEC我孫子事業場に太陽光発電、蓄電池設備を設置して我孫子実証センターを立ち上げ、NEC社内でリソースアグリゲーション関連の検証を実施している。

そうした、研究開発や実証で得た知見が自己託送支援サービスに生かされており、AIを活用することで電力需要に影響するようなイベント情報や気象情報を加味した需要量・発電量の予測が行える。また、設置場所の特性を考慮した設備の制御をリアルタイムで行い、自己託送時に発生するインバランスも低減できる。

NEC 都市インフラソリューション事業部門 第一事業開発統括部 統括部長の川島美一氏は、「遠隔地で発電した電力の自家消費を支援することで、余剰電力の有効活用ひいては企業・自治体の再生可能エネルギーの導入促進に繋げたい」と語った。

  • NEC 都市インフラソリューション事業部門 第一事業開発統括部 統括部長 川島美一氏

    NEC 都市インフラソリューション事業部門 第一事業開発統括部 統括部長 川島美一氏

同サービスでは、ネットワークやIoT機器の設置状況などの調査や、自己託送に必要な装置の設置などを含めてNECが請け負う。

今後は太陽光発電や蓄電池などの設備の設置から、一般送配電事業者などとの契約支援、設備の運用保守までをサポートするサービスを提供する予定だ。

リソースアグリケーション関連市場を拡大し、事業規模120億円の達成目指す

NECでは2025年度を目途に、リソースアグリゲーション事業の事業規模120億円の達成を目標に掲げる。

目標達成に向けて、NEC RAクラウドサービスの機能拡充を進めるほか、再生可能エネルギー分野における参入市場を拡大して収益の最大化を目指す。

2021年度には、NEC自身がエネルギーリソースの制御を行うRA事業者として需給調整市場に参入し、他のRA事業者向けにNEC RAクラウドサービスを提供。2022年12月1日にはJERAと共同で、需要家側の電力需要を制御する「ディマンドリスポンス」などを活用した電力市場取引の実証事業を開始し、卸電力市場への参入を開始した。

同実証事業では、NECの我孫子実証センター内に設置した太陽光発電設備と蓄電池を利用して需要量を制御し、それにより生じた余剰電力をJERAが日本卸電力取引所(JEPX)で取引を行う。

川島氏は、「卸電力市場にも参入したことでマルチ市場対応が完了した。今後はさらに、容量市場、非化石価値取引市場、再エネ価値取引市場への参入も進めていく計画だ。脱炭素社会に貢献する事業として、リソースアグリケーション事業をさらに発展させていく」と述べた。

  • 2025年度に向けたリソースアグリゲーション事業の展開

    2025年度に向けたリソースアグリゲーション事業の展開