岡山大学は、マウス肺癌モデルを用いて、サルナシ果汁をマウスに水代わりに飲ませておくと、肺発がん物質による肺悪性腫瘍の発症数が有意に減少することを確認したと発表した。
同成果は、同大学術研究院医歯薬学域(薬)の有元佐賀惠 准教授、は岡山大学病院の木浦勝行 教授、同 腫瘍センタ―の久保寿夫 助教(当時、現在の所属は日本医療研究開発機構)らの研究チームによるもの。詳細は、Springer Natureの雑誌「Genes and Environment」に掲載された。
野菜・フルーツの摂取は肺がんを含む多くのがんのリスクを低減させることも報告されている。サルナシは岡山県でも栽培されている食用果物で、有元准教授の研究室では、これまでにもサルナシとがんに関する研究が進めてきており、サルナシ果汁に抗炎症・抗突然変異作用のあることを明らかにし、マウスモデルでサルナシ果汁成分の塗布により皮膚がんが予防されることなどを報告している。
今回の研究では患者数の多い肺がんに対し、サルナシ果汁が効果を有するのかどうかをマウス肺がんモデル15匹を対象に実施。具体的には、水代わりにサルナシ果汁を与え、その効果の確認を普通に水とエサを与えるマウス群と比較したところ、肺発がん物質による肺悪性腫瘍の発症数が有意に減少すること、ならびに投与群の方が生じた主要の悪性度が低く、約半数(15匹中7匹)のマウスには悪性腫瘍が発生しなかったことが確認されたという。
また、その発がん抑制の作用機構を調べたところ、サルナシ果汁によるDNA傷害防止とDNA傷害に対する修復促進によるがん発症予防、および増殖シグナル伝達阻害により、がん細胞の増殖を抑制すること、などであることが判明したという。
今回の成果を踏まえ、研究チームでは、マウスモデルではあるものの、肺がんに予防効果のある可能性がある食品を見いだせたことから、今後のがん予防につながることが期待されるとしている。