東北大学と科学技術振興機構(JST)の両者は12月28日、数学において形を扱う分野であるトポロジー(位相幾何学)の概念をもとにして、物質の表面を伝わる特殊な音波の導波路である「トポロジカル音響導波路」を、これまでの中で最も高い周波数となる約2.4GHzで実現したことを共同で発表した。
同成果は、東北大 金属材料研究所の新居陽一准教授、同・小野瀬佳文教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する工学と物理学をつなぐ学際的な分野を扱った学術誌「Physical Review Applied」に掲載された。
空気や物質の振動が波として伝搬する現象である音波のうち、物質の表面に沿って伝搬するものは「表面弾性波」という。表面弾性波は、圧電体に微細な電極を作成することで電気的に発生させたり検出したりすることが可能で、その性質を利用したものが表面弾性波デバイスと呼ばれ、タッチパネルのセンサや携帯電話の高周波信号のフィルタなどで利用されている。このような表面弾性波デバイスは、通信機器やセンサの部品としてさまざまな場面で活用されているが、動作に伴う電力消費が大きいことが課題だった。
そうした中で注目されているのが、形を扱う数学の一分野であるトポロジーの概念をもとにした特殊な音波の伝送路であるトポロジカル音響導波路だ。これは、原理的にエネルギーの散逸が極めて小さくなることから、デバイスの消費電力を大幅に低減できる可能性を秘めていることが理由である。
しかしトポロジカル音響導波路に関するこれまでの大半の研究では、キロヘルツ(kHz)という低周波数帯、かつ空気中の音を対象としていた。一方で、現行の表面弾性波デバイスと親和性のある高周波数帯のトポロジカル導波路は、実験的な難しさもあって実現していなかった。
そこで研究チームは今回、高周波数帯で動作するトポロジカル音響導波路を実現するため、微細な金属の周期構造を圧電体表面に作成したという。その際、トポロジーの異なる2種類の配列パターンを中央で接合させ、その境界が音波の導波路となるように設計された。