アリババクラウドは12月15日、首都圏に日本で3カ所目となるデータセンター(以下、DC)を11月30日に開設していたことを明らかにした。
今回新たに開設したDCはストレージやネットワーク、エラスティックコンピューティング、セキュリティを含めて、データベース関連のサービスから開発者向けのサービスまで幅広いクラウド製品の提供に対応可能だという。
アリババクラウドが国内で新たなDCの開設に至った経緯と、今後の日本市場で同社が発揮する価値について、アリババクラウドで日本のカントリーマネジャーを務めるUnique Song(ユニーク ソン)氏が語ってくれた。
今回新たなDCを開設した理由は大きく以下の2つだ。1つは既存のDCのキャパシティが埋まりつつあるため。そして、もう1つは同社が持つGPU(Graphics Processing Unit)などの最新技術を日本に届けるためだ。
2016年にアリババクラウドが日本初のDCを開設して以来、ゲームやライブ配信を提供する企業やNFTなどのWeb3サービスを手掛ける企業など、幅広い顧客の成長を支援してきた。また、近年ではニューリテール(アリババグループが提唱する、オンラインとオフラインを組み合わせた新しい顧客体験)を提供する小売企業での導入が多いのだという。
アリババクラウドは2020年、エムスリーと共に胸部のCT画像からCOVID-19肺炎患者に見られる画像所見から医師の診断支援を行う医用画像解析ソフトを開発した。このように、取引先の要望に合わせてカスタマイズしたAI(Artificial Intelligence:人工知能)ソリューションを提供する事例も増えているとのことだ。
Unique氏は日本市場について「日本は発達した先進国の中でも品質を重要視するのが特徴的。また、サポートを重視するという特徴もある」と述べていた。
これまで、日本にはアリババクラウドの営業担当、マーケティング担当、技術者のみが配属されていたという。しかし、今年からはコンピューティングやデータベースの専門家などの採用を強化し、より細やかに顧客の要望に対応できる体制を強めた。これまで以上に柔軟に相談を受け付けて、適切なカスタマイズを提供するための取り組みだという。
Unique氏は「これから、国内の従業員の多様性を広げて幅広いニーズに対応できるよう注力する」と語った。
また、同社は今後について、ますます多くの顧客の課題解決に対応するべく、国内で販売パートナーの拡充も強化するとしている。明確な数値目標は無いとしながらも、「2023年度中に100社程度とのパートナーシップを締結できれば嬉しい」とUnique氏は話していた。
アリババクラウドは日本市場に対し、単にIaaS(Infrastructure as a Service)を提供するだけではなく、顧客と共に高付加価値なサービスを一緒に創出するためのソリューションの提供にも挑戦するという。
また、アジア圏を中心に多数のDCを持つ同社ならではの強みとして、日本企業の海外進出をサポートできるとのことだ。特に東南アジアで事業を展開したい企業に対して、現地のDC利用を日本語でサポートするなど、柔軟な支援を提供可能だとしている。なお、同社は現時点で東南アジアに76カ所のDCを保有する。
「お客様には単なるインフラのプロバイダーとしてだけではなく、一緒に新しい価値を作るために手を組む相手として当社を使ってほしい。日本企業は技術やサービス、各業界に関する理解の深さが強みだと思っており、私たちはいつも勉強する気持ちで取引している。当社の技術だけでなくノウハウや人脈なども上手に利用してもらえれば」(Unique氏)