京都大学(京大)は11月29日、2022年で爆発から450年となる「ティコの超新星残骸」をチャンドラX線天文衛星で観測した結果、わずか数年で急速に増光・加熱する特異な構造を発見したことを発表した。

同成果は、京大 理学研究科の松田真宗大学院生、同・内田裕之助教、甲南大学 理工学部 物理学科の田中孝明准教授、宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 宇宙物理学研究系の山口弘悦准教授、京都大学大学院 理学研究科 物理学第二教室の鶴剛教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

2022年12月1日訂正:記事初出時、田中孝明氏の役職を助教と誤って記載しておりましたが、正しくは准教授となりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。

太陽のおよそ8倍以上の質量を持った大質量星が一生の最期に引き起こす超新星爆発は、宇宙空間に莫大なエネルギーを解放し、太陽の1500倍という高温(およそ1000万度)で輝く超新星残骸を形成する。そこには生命や次世代の星の素となる元素が大量に存在し、また高エネルギー宇宙線の生成現場と考えられている。しかし、1回の超新星爆発により、絶対零度に近い星間ガスが数千万度まで加熱されるプロセスにはまだ不明な点が多い。

衝撃波とは、大気などのガス中を伝播する密度や圧力の不連続面のことをいう。超新星爆発により周囲の星間ガスが加熱される仕組みを解明するには、この衝撃波がカギを握っているという。超新星爆発で生じた衝撃波は、2022年1月のトンガの大規模火山噴火で発生した衝撃波の数万倍(秒速1万~数千km)もの初速で宇宙空間に広がっていく。この衝撃波の莫大なエネルギーが、星間ガスを高温に加熱すると考えられている。ところが、遠方の超新星残骸から微小な加熱の瞬間を捉えることは非常に難しく、これまで直接の観測例はなかったという。

そこで研究チームは今回、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエが1572年に観測した超新星爆発の痕跡、ティコの超新星残骸に注目することにしたという。同天体は地球から8000光年の距離にあり、超新星残骸としては比較的近くに位置している。そしてNASAのチャンドラX線観測衛星による、同天体の2000年、2003年、2007年、2009年、2015年の観測データを解析することにしたとする。