大阪公立大学(大阪公大)と大阪大学(阪大)は11月24日、光反応性分子「2,5-ジスチリルピラジン」(DSP)からなる結晶では、光を均一に照射すると光反応が結晶の端から中心に向かって伝播することを発見したと発表した。
同成果は、大阪公大大学院 工学研究科の森本晃平大学院生(大阪市立大学大学院 大学院生)、同・北川大地講師、同・小畠誠也教授、阪大大学院 基礎工学研究科の宮坂博教授、同・伊都将司准教授、同・五月女光助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、独国化学会の刊行する機関学術誌の国際版「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。
光や熱などの外部刺激に応答して物性が変化する「刺激応答性材料」は、次世代機能材料として注目されている。研究チームにおいては、中でも光によって分子構造が変化する分子(光反応性分子)からなる光反応性分子結晶の研究を進めているという。
溶液中のように分子が独立して存在する場合とは違い、結晶中では分子同士が密に規則的に並んでいるため、結晶中特有の光反応を考える必要があるとする。しかし、これまでの光反応性分子結晶材料に関する研究では、結晶中の光反応を溶液中の光反応のように進行すると仮定して考えるものばかりであり、結晶中の光反応速度論に基づいた物性変化の理解が課題となっていたという。
そこで研究チームは今回、さまざまな光反応性分子の微結晶を用いて、光照射による物性変化を観察することにしたとする。そして、DSPの結晶に対して均一に光を照射しているにも関わらず、結晶の色が端から中心に向かって変わっていくこと、つまり光反応が結晶の端から中心に向かって伝播していくことが見出された。
さまざまな検討の結果、“結晶の端では光反応性が非常に高い”という「表面効果」と、“反応した分子の周囲は反応性が高くなる”"という「協働効果」によって、このような特異的な光反応が起こることが明らかにされたという。
今回の研究は、均一照射下においても、結晶中で光反応を不均一に進行させることができるという可能性が見出されたものだ。光化学分野の基礎研究として、大きく貢献する成果と考えられるという。
まだ詳細な原理は不明だが、それがわかれば、一様に光を照射しても反応を空間選択的に進行させ、目的の箇所のみで光反応を引き起こせるようになることが期待されると研究チームでは説明しているほか、それを実現できれば、光を外部刺激とする、さまざまな光機能性結晶材料に応用可能な技術になることが考えられるとしている。
なお、今後は、どのような光反応性分子の結晶でこのような特異な光反応挙動が起こるかを解明し、それを利用した機能材料の創生を目指すとしている。