オーシャンソリューションテクノロジー(OST)、双日九州、鹿児島県、鹿児島大学の4者は11月11日、地域課題である八代海の赤潮の被害回避を目指し、衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」を活用した赤潮の移動先を予測するAIアプリ「赤潮AI予報」を開発し、県内の漁協にて実証を行うことを発表した。

今回の実証は、2022年9月14日、経済産業省の「令和4年度産業技術実用化開発事業費補助金(衛星データ利用環境整備・ソリューション開発支援事業)」に採択されたものだ。

熊本県から鹿児島県にかけての、九州の西部に位置する湾である八代海(別名:不知火海)では、赤潮により養殖のブリやシマアジなどの漁業被害が相次いでいるという。2022年も被害がすでに出ており、9月末時点でその額は、鹿児島県海域では915万円、隣接する熊本県海域ではすでに過去2番目の19億2000万円となっていて、赤潮被害の対策は地域共通の喫緊の課題となっている。

今回の実証では、過去の衛星データと海上の定点観測データを分析して赤潮の移動や拡大傾向を導き出して漁業者に提供するという計画だ。そこで活用するのが、経済産業省事業として、さくらインターネットが開発・運用する、日本発の衛星データプラットフォームであるTellusだ。

さらに、データ集積をもとに赤潮AI予報を開発し、鹿児島県内の漁協の協力を得て、2023年3月までアプリの使用感や導入効果の検証を行う予定だ。赤潮AI予報を開発するのが、漁業者向け漁獲予測アプリ「トリトンの矛」の開発・運用実績のあるOSTである。

またそのほか3者の役割は、八代海や玄界灘で養殖された水産物の輸出・販売の実績がある双日九州は、既存事業のつながりを活用した事業化支援を行う。鹿児島県は鹿児島県水産技術開発センターが保持する過去の赤潮発生時の水質データを提供し、新産業創出に向けた支援を行う。そして鹿児島大は、同大学が保持する技術の活用支援や地域のDXに関する支援を行うとした。

今回の実証を成功させることができれば、八代海の赤潮被害の回避につながるとともに、将来的には同じ九州の有明海やほかの海域への利用拡大も期待されるとしている。

  • Tellusの衛星データを活用した赤潮対策の実証

    Tellusの衛星データを活用して赤潮対策の実証が行われる (出所:鹿児島大プレスリリースPDF)