山口大学は11月8日、夜間にクヌギの樹液場を占拠していたカブトムシが、早朝にオオスズメバチによって次々と投げ落とされ、数分のうちに樹液場を乗っ取られることを発見したと発表した。
また早朝から昼にかけて、樹液場にオオスズメバチが飛来するのを実験的に阻止し続けたところ、カブトムシの半数以上は明るくなっても樹液場に留まり続けたことも併せて発表された。
同成果は、山口大大学院 創成科学研究科(理学系学域) 生物学分野の小島渉講師によるもの。詳細は、米国生態学会が刊行する生態学に関する全般を扱う学術誌「Ecology」に掲載された。
クヌギの樹液場には多くの昆虫が集まることが知られており、また昆虫も昼行性と夜行性があるため、昼と夜では集まる顔触れもまったく異なる。昼間は、ハチの仲間、チョウの仲間、カナブンなどが主に見られ、中でもオオスズメバチはヒエラルキーの頂点に立ち、ほかの種の昆虫を追い払い、樹液場を独占するという。一方、夜間には、カブトムシ、ガの仲間、クワガタムシなどが集まり、その中で支配的なのはひときわ大きな身体を持つカブトムシとされている。そこで気になるのが、昼と夜の王者であるオオスズメバチとカブトムシがもし出会ったら、何が起こるのかという点であり、小島講師は今回、山口県内のクヌギ林で、樹液場の観察を行うことで、この謎の解決に挑んだという。
樹液場に集まるカブトムシを観察していたところ、早朝(5時ごろ)になると、樹液場に数匹のオオスズメバチが飛来。オオスズメバチはカブトムシの脚に噛みつき、次々と投げ落としていく姿を確認できたという。カブトムシはオオスズメバチよりも体重が大きく、硬い外骨格に守られているが、脚に噛みつかれると、しがみつく力が削ぎ落とされ、抵抗できなくなるようだと小嶋講師は考察している。
またオオスズメバチは逃げるカブトムシを執拗に追いかけ、ときにはカブトムシが地上に落下した後も攻撃を続けることもあったとする。樹液場には10匹以上のカブトムシがいたが、数分のうちに樹液場はオオスズメバチに乗っ取られてしまう様子が観察されたという。
このようなオオスズメバチによるカブトムシの排除行動は、観察を行った3日間の早朝のすべてにおいて観察されたとする。また、同じ調査地で、日没直後(19時ごろ)に、樹液場に飛来した1頭のカブトムシが、樹液場に残っていたオオスズメバチに執拗に攻撃され、排除される様子も確認されたとしている。