新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ワクチンや治療薬の開発が続いているが、新薬開発にはさまざまな課題があるといわれている。こうした課題を解決するため、アキュリスファーマとサスメドは今年6月にブロックチェーン技術を活用した治験に向けて協業を発表した。
ブロックチェーン技術を取り入れた治験モニタリングシステムを開発・提供するサスメドにサービスを提供するAWS ジャパンは11月8日、医療分野におけるクラウド活用事例として、両社の取り組みを紹介する説明会を開催した。クラウド、ブロックチェーンといったテクノロジーは新薬開発においてどのようなメリットをもたらすのだろうか。
ヘルスケア業界で求められるコンプライアンスを提供
アキュリスファーマとサスメドを紹介する前に、AWSのクラウドがどのような形でヘルスケア業界を支援できるかについて整理しておきたい。
執行役員パブリックセクター統括本部長 宇佐見潮氏は、ヘルスケア業界が抱える課題について、「ヘルスケア業界では、医療機関や関連企業が信頼できる、セキュリティ、コンプライアンス、データプライバシーが必要とされている。また、データが個別最適化される形で分断されており、有用な示唆情報を見つけることが難しい状態にある。患者の疾病情報も病院をまたいで共有も十分にできていない」と指摘した。
こうした状況に対し、AWSはヘルスケア業界で求められるグローバル認証と認定を取得しており、信頼性・安全性・コンプライアンスに優れたプラットフォームを提供できるという。
さらに、宇佐見氏は「われわれの機械学習ツールを活用すれば、インサイトを引き出すことができる。これにより、患者の体験も変わってくる。医療機関はAWSのサービスによって管理負担を軽減して、患者によりよいヘルスケア体験を提供可能になる」と語った。
AWSの導入により、エンジニアはサービス開発に注力可能に
また、パブリックセクター シニア事業開発マネージャー 遠山仁啓氏は、「創薬研究、臨床開発、製造、営業・マーケティング、患者支援という製薬業のバリューチェーンの各段階でAWSが支援できる」と説明した。
遠山氏は同社のヘルスケア業界における取り組みとして、日本の医療情報ガイドラインへの対応、医薬品・医療機器のコンプライアンスへの対応を紹介した。AWS 環境上で医療情報システムに関するガイドラインに対応するための考え方や関連するAWSの情報に関する文書を公開している。
そして、サスメドが治験モニタリングシステムに採用しているのが「Amazon Managed Blockchain」となる。これは、オープンソースフレームワークのHyperledger Fabric やEthereumを用いたスケーラブルなブロックチェーンネットワークを簡単に構築・管理できるフルマネージドサービスだ。
サスメドがAWSのサービスの導入によって得た効果としては以下があるという。
- システム安定性が向上したこと
- 簡単に統合できるコンポーネントとスケーラビリティにより、リリース後の要件の変化に容易に対応できること
- メンテナンスに掛かる時間が削減し、エンジニアはよりサービス開発に注力できること