Pyxisでは何を実証する?

AxelLinerの軌道上実証のため、開発する衛星がPyxisである。同衛星のプロジェクトマネージャである杉本和矢氏は、このPyxisという名前について、「日本語では羅針盤座の意味。宇宙開発をやりたいが、どう進めたら良いか分からない。そういう企業の道しるべとなれるようにと願いを込めた」と説明する。

  • Pyxisプロジェクトマネージャの杉本和矢氏

    Pyxisプロジェクトマネージャの杉本和矢氏

AxelLinerの標準衛星バスは、Nタイプ(ノーマル)とHタイプ(ハイパフォーマンス)の2種類を用意する予定だが、Pyxisではまず、Nタイプの実証を行う。仕様の詳細はまだ決まっていないものの、重量は100~150kg程度、サイズは110×90×66cm程度になる見込みだ。

  • AxelLiner実証衛星初号機「Pyxis」のイメージCG

    AxelLiner実証衛星初号機「Pyxis」のイメージCG (C)アクセルスペース

衛星のバス部とは、計算機、電源、姿勢制御など、どんな衛星にも搭載される基本機能の部分のこと。同社のこれまでの衛星のように、毎回カスタマイズすれば、性能的には最適となるものの、開発期間やコストが増大する要因となる。これを標準化し、様々な衛星で活用するものが標準衛星バスである。

標準衛星バスを利用すれば、あとは観測衛星、通信衛星、実験衛星など、目的ごとに変わるミッション部のみ開発すれば良い。基本的に、ミッション部は顧客側で、AxelLinerのインタフェースに合わせて開発することになるが、必要に応じ、同社が中間アダプタを開発し、顧客機器側のインタフェースに合わせることも可能だ。

  • 標準衛星バスの使い方

    標準衛星バスの使い方。いずれにしろ、バスのカスタマイズは不要になる (C)アクセルスペース

さらに、自動運用システムの実証も行う。同社は、独自の自動化レベルとして、すべて手動のレベル0から、未知の異常まで対応するレベル5まで、6段階を設定。すでに、初期チェックアウトや複数衛星の運用を自動化したレベル3まで実現していたが、Pyxisではさらに、顧客側がWEBベースのツールで自動化するレベル4を狙う。

  • 同社が考える自動化のレベル

    同社が考える自動化のレベル。Pyxisではレベル4を目指す (C)アクセルスペース

また、宇宙機製造アライアンスにより、Pyxisの製造は由紀ホールディングス側の設備で行われることになるが、AxelLinerの機能を使い、リモート製造のデモも行う。この実証では、アクセルスペースが遠隔で、各種試験を実施する予定となっている。

  • リモート製造のデモ

    リモート製造のデモ。遠隔地から試験ができれば、かなり便利だ (C)アクセルスペース

Pyxisには、2つのミッションも搭載する。1つは、次世代GRUSでの使用を想定した望遠鏡で、もう1つは、LPWA規格の衛星無線実験装置だ。後者はソニーグループとの共同研究となるもので、「地球みまもりプラットフォーム」の実用検証として実施するという。

  • 衛星リモートセンシングと地上IoTセンサーを活用し、地球をくまなく観測する

    衛星リモートセンシングと地上IoTセンサーを活用し、地球をくまなく観測する (C)ソニーグループ

Pyxisは、2023年にフライトモデルの開発を開始。同年末に射場へ輸送し、翌2024年第1四半期に打ち上げる。ロケットはSpaceXのFalcon 9を使用し、ライドシェアミッション「Transporter-10」に搭載される予定だ。

  • 記者説明会には、ソニーグループ側から堀井昭浩氏(右から2番目)と伊東克俊氏(右)も出席した

    記者説明会には、ソニーグループ側から堀井昭浩氏(右から2番目)と伊東克俊氏(右)も出席した