群馬大学(群大)は10月7日、脂肪で産生される物質が膵臓の膵島にある「膵β細胞」を増殖させ、インスリンを増加させることを明らかにしたと発表した。

同成果は、群大 生体調節研究所の白川純教授をはじめとする、横浜市立大学、米・ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センター、カナダ・アルバータ大学らの研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Cell Reports」に掲載された。

インスリンは、人体で血糖値を下げられるホルモンであり、膵臓の膵島に存在する膵β細胞によって作られていることが知られている。血糖値が上がったときは、それを下げるために膵β細胞が増殖することでインスリンを補うと考えられているが、この作用がうまく働かなくなると、インスリンが相対的に不足し糖尿病を発症してしまう。そのため、どのようにして代償的に膵β細胞が増えるのかがわかれば、少なくなった膵β細胞を増やし、体内でインスリンを増やすことで糖尿病の治療につなげられると考えられている。

また、肥満やメタボリックシンドロームなどの内臓脂肪が蓄積すると、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」という状態になってしまうことも知られており、このインスリン抵抗性においては、脂肪組織の中で炎症などの変化が起こっていることがこれまでの研究からわかっていたが、膵β細胞にどのような影響を与えているのかまでは不明だったとする。

そこで研究チームは今回、人工的にインスリン抵抗性を作り出したとき、膵β細胞ではどのようなことが起こるのかを詳しく調べることにしたという。具体的には、インスリンの作用を特異的に阻害するペプチドである「S961」をポンプで持続注入することで作り出された「急性インスリン抵抗性モデルマウス」を用いて、膵β細胞への影響の解析が行われたという。