自然保護への注目度が高まる昨今、「SDGs」という言葉を聞く機会が増えているのではないだろうか。SDGsとは、「持続可能な開発目標」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択されて以来、2030年の15年間を期限として、国連加盟193カ国が17個の目標を達成するために日々奮闘しているものだ。
その目標の中には、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用すること」を目的とした「SDGs14海の豊かさを守ろう」が設定されている。
このような目標に掲げられるほど、現在の海の状態は芳しくなく、地球温暖化による海水温の上昇により海洋生物の生息環境に影響を及ぼしているのだという。
そんな海の現状について、ロボットを通じたプログラムでさまざまな世代に伝えるべく始動したのが、今回話を聞いた「ロボットガイド~エイのおはなし~」だ。プログラムの内容や開発に込めた想いについて、マクセル アクアパーク品川の阿部崇文氏に話を聞いた。
楽しみながら海を学ぶ「ロボットガイド~エイのおはなし~」とは?
今回話を聞いた「ロボットガイド~エイのおはなし~」は、7月20日からWEB事前予約制の平日限定のプログラムとして開始されたものだ。
海の環境について感じ・考える機会を提供したいという想いからサービスが開始されており、ロボットスタートアップSenxeed Robotics社協力のもと、トンネル型水槽「ワンダーチューブ」の前で、AIインフォメーションロボット「Cruzr」による「エイ」の解説を聞きながら水槽内にくらす10種類以上のエイを間近で観察しながら、体の仕組みや進化の過程などの生態を学ぶことができる。
「1名につき300円と有料のサービスですが、週を追うごとに反響が高まっており、毎日ご予約をいただいています」(阿部氏)
利用している層は、夏休み期間だったこともあってファミリー層が中心だというが、子どもからシニア層まで幅広い年代が気軽に利用することができるのだという。
特に子どもであれば夏休みの自由研究などに内容を生かすこともでき、楽しみながら勉強をするのにうってつけのプログラムとなっているようだ。
「導入にあたり、館内の混雑を考慮して、ロボットをどのように移動させたら良いのか、という導線の部分ではかなり苦労しました」(阿部氏)
筆者が取材に伺ったのは平日の比較的遅めの時間だったが、それでも館内は非常に賑わっていた。夏休みの期間だったからということもあるだろうが、子どもたちも多く、確かにロボットが自由に移動できるようにするにはいささか困難がありそうだ。
そのため、比較的広いスペースが確保でき、マクセル アクアパーク品川の目玉の1つでもあるトンネル型水槽「ワンダーチューブ」の前にCruzrを固定することで、実際に水槽の中を見られる環境と来場者が安全に利用できる仕組みを成り立たせたのだという。
「マクセル アクアパーク品川は、元々『生きもの×テクノロジー』をテーマに置いた水族館です。この『ロボットガイド~エイのおはなし~』をはじめ、ショーや展示演出などで使用される最先端のテクノロジーをフックに海の生物に関心を持ってくださるお客様が増えたら良いなと思っております」(阿部氏)
目の前はエイが自由に泳ぎ回る水槽!実際に体験してみた
今回筆者は、実際にマクセル アクアパーク品川内で「ロボットガイド~エイのおはなし~」を体験させていただいた。
初めに、1枚のイラストや穴埋め問題がたくさん載ったワークシートを受け取り、プログラムスタート!
阿部氏の操作の元、AIインフォメーションロボット「Cruzr」が起動する。
「こんにちは。私はクルーザーだよ」と、可愛らしく自己紹介をしてくれる。
進行役はこのCruzrが担ってくれるのだが、表情も豊かで可愛らしく、またセリフに合わせて顔の部分に説明文も表示されるため、聞き逃したとしても安心な仕様だ。
ワークは、Cruzrの説明を聞きながら最初に配られたワークシートを埋める形で進んでいく。
章は全部で4つあり、それぞれ「エイってどんな生きもの?」「エイのからだ」「エイたちの進化」「わたしたちの生活でエイたちの数が減っている?」というタイトルが設定されている。
最初の「エイってどんな生きもの?」という章では、エイが生物学上でどのような立ち位置にいるのか知ることができる。サメと見た目や大きさが似ていても違う種類であることや、その見分け方も学ぶことができる。
続いてのパートの「エイのからだ」では、エイの身体にある器官について、その名前と役割について聞き、どのような身体の構造をしているかを勉強することができる。
そして、「エイたちの進化」の章では、ナンヨウマンタやアカエイなどのエイたちが、どのような進化を経て、今の形にいきついたのかを学ぶことができる。なお、ワークシートで紹介されている一部の種類は、実際にマクセル アクアパーク品川内で見ることのできる。
最後の「わたしたちの生活でエイたちの数が減っている?」では、今回のプログラムの根本にある「SDGs14海の豊かさを守ろう」について考える時間が設けられている。海の汚れの現状や海のごみ問題、海の生物の乱獲などの状況を知り、そこから自分たちは何ができるのかを書き出してみる時間が取られている。
今回、この「ロボットガイド~エイのおはなし~」を体験し、私自身、エイについてたくさんのことを知ることができた。
特に筆者が興味深かったのは、エイの身体の構造だ。一見すると、どのように泳いでいるか分からないようなあの大きなエイの構造の話は、大人になった今聞いてもとてもわくわくする内容のものだった。
海を守るためには、まず知ることから
海の生物が減っているという話は日常生活でも度々聞く大きな問題だ。さんまやマグロなど、日本の食卓に欠かせない魚たちも乱獲や地球温暖化の影響を受けてその数を減らしいているという話は聞いたことがあるだろう。
「近いうちにマグロが食べられなくなるかもしれない」
という言葉を聞けばその重大性が伝わるのではないかと思う。
そんな魚たちの生態を守り、きれいな海を残していくためには、まず私たちは今置かれている海の危機を知る必要があるのではないかと思う。そのために、「ロボットガイド~エイのおはなし~」を通じて、現状を知り、今後何ができるかを考える時間を家族や友人で持てたら良いのではないだろうか。