通勤・通学時に誰しも一度は経験したことがあるであろう靴擦れ。新しい靴を履いた時、長時間歩いた時などに足に痛みを全く感じたことがないという人は少ないのではないだろうか。
2020年に行われたキズパワーパッドの調査では「就活生の約8割が就活中に履き慣れない就活靴による靴ずれや痛みを経験し、さらに6人に1人が、靴ずれで血を流した経験がある」という結果が出ているほど。
それだけ靴擦れは日常生活を脅かす存在であることは確かだが、それが子どもの場合ではどうだろうか。日々成長する足の大きさに見合わない靴を履き、いつでも走り回っている子どもたちは、大人の何倍もの負担を足に負っているような気がする。
そんな子どもの足の成長をテクノロジーの力でサポートできるのではないかと目を付けたのが、アシックスの子どものあし成長予測ツール「ASICS STEPNOTE」だ。
今回は、子どもの成長を予測技術で支える「ASICS STEPNOTE」について、アシックス キッズプロダクト部の部長である椎名一平氏に話を聞いた。
ASICS STEPNOTEのポイントは「ちょっとおせっかい」?
「ASICS STEPNOTE」とは、2021年12月に提供開始されたサービスで、足の大きさを遊ぶように楽しく記録することで、適切な靴のサイズを適切なタイミングでお知らせする「ちょっとおせっかいな」デジタルサービスとなっている。
「ASICS STEPNOTEのコア技術は、成長予測とそれに対応するパーソナライズされた製品推奨の2つです。アシックススポーツ工学研究所が『子どもの足形』について過去20年以上にわたってデータを取得し、分析してきたという背景から、この成長予測が可能になっています」(椎名氏)
椎名氏の説明の通り、ASICS STEPNOTEのコア機能は「足の成長予測」と「成長予測と好きなスポーツなど子どもの情報と掛け合わせたおすすめ商品の紹介」の2点となっている。これら以外にもちょっとおせっかいな機能があり、「足の計測をリマインド」「『あしあーと』の作成」「スタンプカード機能」といったものを利用できるという。
「ASICS STEPNOTEは、『ちょっとおせっかい』をコンセプトにしています。子どもの成長は喜ばしい反面、保護者にとっては不安要素になることもあります。特に靴に関しては『適切』がそれぞれ異なる上、子どもは靴が自分の足に合っているかどうかということがなかなか分かりません。そのため、靴選びのプロである私たちがおせっかいを焼くことで、保護者の方にとっても、靴を履く子どもにとっても安心な靴選びのサポートができると思っています」(椎名氏)
子どもの足は、成長のスピードも速く、骨も柔らかく合わない靴を履いていても気が付きにくいため、このようなサービスを利用し、定期的に靴のサイズを見直すことが必要になってくるのだという。
子どもの靴を買うのは共同作業 どんな家族でも利用できるサービスに
椎名氏は「このASICS STEPNOTEを利用することで、ECサイトでのお買い物の際、適したサイズ選びや好みにあう靴選びをサポートできると考えています」とも話す。
コロナ禍になり、直接店舗に行って買い物をする機会が減ったという人もいるだろう。その時に活躍するのがECサイトやネットショッピングだが、確かにサイズが合うかが不安で購入には至らないというケースも多いように感じる。 しかし、このASICS STEPNOTEで事前に適切なサイズが分かっていれば、買い物のミスを減らすことができそうだ。
「子どもの靴を買うことは家族の共同作業です。サイズや値段、デザインなどあらゆる面を家族で考えて買う必要があります。しかし、一から子どもと靴を決めるとなると、とてつもない時間がかかってしまうケースもあります。そこで、事前にサイズやおすすめの靴をお知らせしておくことで、店頭であってもECサイトであっても買い物の時間を短縮することができます」(椎名氏)
最後に椎名氏は、今後の展望として「計測を習慣化してもらうこと」と「どんな家族でも利用できるサービスにする」ということの2点を挙げた。
「まず計測の習慣化については、今でもリマインドなどは行っているものの、足の大きさは体重の変化や怪我など些細な要因で簡単に変わってしまうものです。そのため、計測機とASICS STEPNOTEを連動させて、よりパーソナライズされた分析を可能にしていくとともに、利用者の皆様にも計測の習慣をつけていただけるように取り組んでいきたいです。また、パーソナライズの観点で言うと『ある一つ家族を想定する』のではいけないと思っています。今は体型の要素でしか分析できませんが、足の形や家庭の考え方には個人差があります。どんな家族であっても使えるサービスを目指し、よりパーソナライズされたサービスを目指していきたいです」(椎名氏)
自分が子どもの頃を思い出すと、筆者はよく転ぶ子どもだったことを今回取材をしながら考えていた。縦横無尽に辺りを確認せずに走り回る向こう見ずな性格ももちろん要因の一端を担うだろうが、恐らく「靴」も要因の一つだったのだろう。
実際に3歳以上の子どもがよく転んでしまう要因の一つには靴のサイズがあることが考えられている。また、早稲田大学スポーツ科学 学術院スポーツ整形外科の福林徹教授が「最近の子どもは、誤った靴を履いて日常を過ごす環境下で、足裏筋力の衰えが生じ、さまざまな弊害を引き起こし、外反母趾や偏平足といった足の障害が増えている」と、子どもの骨形成における問題点を指摘しており、靴が子どもの成長において重要な役割を持っていると言われることが多くあるようだ。
今後、子どもの成長を見守る上で大事な要素の中に「靴選び」も入ってくるだろう。そんな保護者の気持ちに寄り添い、スポーツ工学の最前線から子どもの成長を見守る「ASICS STEPNOTE」の今後の発展から目が離せない。