HCI(ハイパー・コンバージド・インフラ)のソリューションを提供するニュータニックス・ジャパンは9月14日、オンライン記者説明会を開き、2023年度(2022年8月1日~2023年7月31日)の事業方針を発表した。
多様なワークロードのニーズが高まる中で、同社はさまざまな業種とのユースケース創出を推進しつつ、パブリッククラウドの知見を有するパートナーとの協業を強化する方針だ。また、ユーザー向けには早期導入支援のコンサルティングサービスを新たに提供する。
説明会では、ガートナーが2022年8月9日に発行したレポート「日本におけるクラウドとITインフラストラクチャー戦略のハイプ・サイクル」を例に、ハイブリッドクラウドのニーズの高さが示された。ハイプ・サイクルにおいて、マルチクラウドが幻滅期に入っている一方で、HCIは啓発期に位置づけられる。昨今ではクラウド・ネイティブの要素を取り入れた新しいオンプレミスである「Newオンプレミス」が黎明期にあり、注目されてきているという。
2022年6月13日付で同社の代表執行役員社長に就任した金古毅氏は、「ビジネスの変化に対応するべくクラウドの採用が進む一方で、セキュリティやレイテンシの観点からオンプレミスのニーズも依然として高い。旧来のように、『オンプレミスかクラウドか』という検討でなく、アジリティの高いインフラでいかに多くのアプリケーションに対応できるかが重要になってきていると考え、市場のニーズに応えるべく、当社は4つのビジネス領域に取り組む」と語った。
多様なワークロードへの対応を進め、ビジネスアジリティ向上を支援
ニュータニックス・ジャパンでは、顧客のビジネスアジリティ向上を支援するべく新たなワークロードへの対応を進め、製品ポートフォリオを強化していく方針だ。
同社では、HCIの技術を核にハイブリッドクラウドの構築・運用基盤を提供するNCI(Nutanix クラウドインフラストラクチャー)やマルチクラウド上のサービスを運用・管理するためのNCM(Nutanix クラウドマネージャー)、NUS(Nutanix ユニファイドストレージ)、NDB(Nutanixデータベースサービス)、エンドユーザコンピューティングの5つの製品で構成される「Nutanix Cloud Platform」を提供している。
同社がプラットフォームを提供し始めた当初は、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)やインフラアプリケーションでの利用が中心だった。だが、直近ではデータベースやデータウェアハウスのほか、ERP(Enterprise Resources Planning)やSCM(Supply Chain Management)といった基幹系アプリケーション、特定業界向けのアプリケーションなどと用途が広がっているという。
例えば、SBテクノロジーでは、Nutanix Cloud Platformを利用してデータベースの運用の効率化とサービスの標準化のためにDBaaS(Database as a Service)を内製化した。また、三井化学はデータドリブン工場のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)基盤を構築し、国立国会図書館はオンプレミスとクラウドを使い分けて所蔵資料のデジタル化を推進している。
ニュータニックス・ジャパンでは、顧客の「ハイブリッド マルチクラウド化」をコストを抑えて実現できるよう、日本固有の財務や税務、商習慣に精通したクラウドエコノミストというポジションを設立してクラウド移行のコスト分析やサポートをしている。
これまでは、同エコノミストによるセミナーや、ヒアリングに基づいたレポ-ト作成などを実施してきたが、今後は日本独自のコンサルティングメニューとして、新たに3つの早期導入支援パッケージを有償で提供する。
また、グローバルでは、ユーザー向けサービスプログラムを「Nutanix Expartサービス」として刷新した。同サービスからは、日本独自サービスとして設計・要件定義を支援するコンサルティングサービスを提供する。
クラウドインテグレーターとの協業を強化
パートナーエコシステムの拡充も進める。特に今後は、ハイブリッドクラウドやクラウドネイティブ技術に知見のある企業とのパートナー契約を推進するという。
「HCIのソリューションを提供した当初はハードウェアプラットフォームのパートナーとの協業が中心だったが、ワークロードの広がりとハイブリッドクラウドのニーズは依然として高い。従来のシステムインテグレーションに強い企業はもちろん、顧客ニーズもインフラからアプリケーションへと移る中で、クラウドネイティブなパートナーとの提携を加速する必要があると考える」と金古氏。
説明会では、北海道札幌市におけるハイブリッドクラウド環境構築(2022年7月28日発表)で協業したアイレットが新たにパートナーに加わったことが発表された。また、両社の連携を密にすべく、ニュータニックス・ジャパンもアイレットのパートナープログラムに参加する。
アイレット 執行役員の後藤和貴氏は、「パブリックセクターの中でも官公庁や自治体では、IT改革が実現していない領域が多く残っている。両社のソリューションを連携することで、既存のITインフラの刷新とクラウド活用を支援していきたい」と述べた。
このほか、ニュータニックス・ジャパンでは自社のポートフォリオをベースに、パートナー企業と新たなサービスを開発・提供していく「ジョイントソリューション」を展開しているが、この分野でのパートナーとの共創・協業・戦略的提携も積極的に推進していくという。
例えば、NTTPCコミュニケーションズとはデータセンターのモダナイズ領域で協業し、VDI環境に3デザインとデジタルツインの開発が行える環境を実装したサービスを提供している。また、NTTコミュニケーションズとは、同社のWasabi TieringとNutanixとユニファイドストレージを連携させて、データ管理ソリューションを提供するなどしている。
CX(カスタマーエクスぺリエンス)向上に向けた取り組みとしては、今後はクラウドエコノミストによる投資対効果の明確化、カスタマーサクセス部門の強化などを進める。
業界ごとの営業体制も強化する。具体的には、金融、製造、流通、サービスプロバイダー、メディア&エンターテインメント、パブリックセクターの6つに組織化し、業界特有の課題解決に繋がる提案に注力する。
このほか、顧客のSX(サステナビリティトランスフォーメーション)の観点での課題解決に向けて、消費電力削減につながる取り組みも強化していくという。
その点について金古氏は、「事業活動に関係するあらゆる温室効果ガスの排出量(サプライチェーン排出量)におけるSCOPE2において、クラウドアーキテクチャを活用することで、従来の3層アーキテクチャに比べて消費電力を最大45%削減できると当社では公表している。クラウドエコノミストの活動を通じて、お客さまのサステナビリティ活動に貢献していきたい」と最後に述べた。