コロナ禍により働き方が見直され、ニューノーマルな時代を迎えつつある現在。ジェイックの調査では、テレワークと出社どちらもの選択肢を持つ「ハイブリッドワーク」で働きたいと回答した新卒社員は43.6%にも上るという。ハイブリッドワークが推奨される現代において、会社の移転やオフィスの縮小、リフォームを決めた企業も多い。
今回は、そんな企業の中から「会社を家のように使えるようなオフィス」へとリニューアルを行った企業を紹介する。話を聞いたのは、販売員と顧客をつなぎ合わせることにより、店舗とECを融合させることができるオムニチャネルのサービス「STAFF START」を展開するバニッシュスタンダードの代表取締役CEO小野里寧晃氏だ。
オフィスは「ファッションの街・原宿」
バニッシュスタンダードのオフィスは、東京都渋谷区の原宿に居を構えている。場所としては、原宿の顔となっている竹下通りのすぐ隣の通りにあり、出社するにあたっても竹下通りを経由してオフィスに行くルートが最もポピュラーなのではないかと思う。
原宿へ移転する前は、西麻布にオフィスがあったそうだが、オフィスの移転に際して外せない条件の一つとして「原宿」という要素があったという。
「原宿はファッションの街です。出勤、退勤の際にアパレルショップの前を通ったり、店員の方がSNSに載せる用の写真を撮っているところを見ることができたり、という『アパレル業界のリアル』が日常的に見られる街にオフィスを置きたいという想いから、ファッションの街である原宿を選択しました」(小野里氏)
また、もう一つの外せない条件として決めていたのが「一棟借り」という点だった。以前のバニッシュスタンダードのオフィスは一軒家を改築したものだったといい、その時に感じていたメリットをそのまま生かせるようにこの形にこだわったのだという。
「自由に社員同士が行き来し、時に騒ぎながら交流をする。そんな自由なオフィスを目指した時、他の企業が入っているオフィスビルではなかなかこれが実現しません。『自分たちのルールで仕事ができる』そんな想いで一棟借りができる場所を探していました」(小野里氏)
この言葉の通り、バニッシュスタンダードのオフィスは他のオフィスでは考えられない「自由さ」を持ったオフィスだった。以下では、オフィスを拝見して筆者が驚いたポイントを紹介していこう。
あえてプライベートと会社を分けない? 「会社にいるのが苦じゃない」を目指したオフィス
オフィスの中に入るとまず目を引くのは、1階で大きなスペースを取っている「キッチン」だ。「オフィスの中にキッチン?」と思う方も多いだろう。筆者も初めてキッチンの存在に気が付いた時は、非常に驚いた。
「社員みんなに会社に来てほしいという想いもあり、週に2回オフィスにいるすべての人にキッチンで賄いを作って振る舞うというイベントを行っています。コロナ禍になり、集まる機会が取れなくなってしまいましたが、またこうしてみんなで集まれる空間を作っていきたいです」(小野里氏)
バニッシュスタンダードでは、この「オフィスをみんなが集まれる場所にする」ということに注力しており、キッチンの横にはなんとお酒を管理するための小さな冷蔵庫まで完備されている。アイデアを出す時や社内で集まってミーティングをする時には、仕事中でもお酒を飲むこともあるそうで、その自由な社風がうかがえる。
またその他の特徴と言えるのが「地下フロア」の存在だ。オフィスの入口がある1階から1つ下の階に降りると、そこは通常のオフィスとは少し雰囲気の異なる空間が広がっている。
大きなテレビにソファ、天井にはミラーボールが付けられており、一見するとおしゃれな家のような雰囲気である。なおかつ、このフロアにはベッドや洗濯機、シャワールームも完備されており、本当の家のように使用することができるのだ。
「よくプライベートと会社は分ける、という話を聞きますが、私はそれに対して反対です。せっかく人生の大半を過ごす会社なのだから、『会社にいるのが苦ではない』というオフィスを作りたいと思って、このようなスタイルを採用しています」(小野里氏)
そんな自由でのびのびと仕事ができる環境のバニッシュスタンダードだが、そこには社名にも込められているある想いがあるという。
「社名にもあるように、弊社は『常識をなくす』ことを仕事にしている企業です。『今までの会社の在り方』というものに社員が縛られていては、常識を打ち破ることなんてできません。したがって、社員のみんなにはなるべく楽しく、アイデアがあふれる、常識に捕らわれないオフィスで働いてほしいと思います」(小野里氏)
「常識をなくすためにはまず、組織の中から変わっていく必要がある」と語った小野里氏。「コロナ禍」という今までの常識が崩れていく世の中にあって、今後どんな「新たな常識」が生まれていくのだろうか。 その時に先陣を切っているのは、こんな常識破りのオフィスで日々常識と向き合い続ける会社かもしれない。