コロナ禍により私たちの生活は大きく変わった。中でも大きな変化があったのは「働き方」ではないだろうか? テレワークの普及やオンライン商談の増加など、私たちの世界はニューノーマル時代に突入している。その中で、「オフィスに求める役割」が変わってきていると考える人が増えており、コロナ禍でオフィスを移転、リニューアルした企業は数多いと言われている。

今回、2022年5月にオフィスを移転したwevnalに伺い、リニューアルしたオフィスを見せていただいた。wevnalは、どのような狙いにより、オフィスをリニューアルしたのだろうか。代表取締役の磯山博文氏、執行役員CMOの籭健太氏、広報部の政岡まなみ氏に話を聞いた。

  • 左から広報部 政岡まなみ氏 代表取締役 磯山博文氏 執行役員CMO 籭健太氏

目指すは「社員同士の化学反応」

wevnalのオフィスに着いて、まず目を引かれたのは、一面ガラス張りのエントランスだ。オフィスに入る前から社員が働いている様子を見ることができるようになっている。 「このエントランスの雰囲気からも分かるように、リニューアルしたオフィスでは『オープン性』を大切にしています」と磯山氏は話す。

  • 「リニューアルしたオフィスではオープン性を大切にしている」と語る磯山氏

エントランスは、それ以外にも工夫が凝らされている。 受付付近の床を見てみると、周りの雰囲気とは少し違うメタリックなデザインになっているのだ。 「ここからみんなで作り上げていく」という意味合いを持たせるため、あえて未完成で無骨に感じられるようなデザインを採用したのだという。

  • エントランスの様子。あえて無骨なデザインを採用することで「ここからみんなで作り上げていく」気持ちを表現

実際にオフィスの中に入ってみると、至るところにフリースペースがあるのが分かる。これも会社をオープンにするための仕掛けだ。

リニューアルされる前のオフィスでは、仕事をするための机だけでほとんどスペースが埋まってしまっており、社員同士の交流が生まれていなかったそうだ。しかし、この社員同士が交流できるフリースペースを設けたことで、さまざまな人との会話やコミュニケーションが自然と生まれるようになったという。

フリースペースもさまざまなスタイルのものがある。ミーティングなどに使用できるスタンディングのテーブルが設置されたスペースもあれば、リラックスしながらコミュニケーションを図れるスペースもあり、用途によって使いわけることもできるという。

  • 左:スタンディングテーブルを使ったミーティング風景、右:フリースペースで会話をする社員の様子

「集中して作業をする場所とリラックスする場所でメリハリを付け、社員同士、さまざまな化学反応を起こしてほしいです。出社することが強制ではない今、あえて出社することの意味を持ったオフィスにしていきたいと思っています」(磯山氏)

実際、ミーティングスペースや個別商談ブースといった集中して作業を行う場所がある一方、ダーツ盤や卓球台など、終業後に社員同士で交流を深めることができるアイテムも数多くそろえられており、「メリハリ」に重きを置いていることが伝わってきた。

  • 終業後に卓球で交流を深める様子。普段から広い年代が使用しているそう

オフィスは「クライアントのビジネスを成功に導くための企画本部」?

さまざまな工夫が凝らされているwevnalのオフィスだが、このオフィスのデザインは、社員に驚いてもらうため、引っ越しが完了するまで内緒にされており、いわば「サプライズ」だったのだそう。それゆえに多くの苦労があったと語るのは、移転に伴いプロジェクトチームで一翼を担っていた籭氏だ。

「サプライズ感を大切にしていたので、シークレットを徹底する一方で現場を巻き込みながらプロジェクトをすすめるのが大変でした。また、引っ越しの時期が丁度、コロナ禍と昨今の不安定な国政情勢と重なっていたこともあり、いくつかの家具が移転日に間に合わないトラブルもありました」(籭氏)

さまざまなトラブルに見舞われながらも、サプライズは大成功を収め、社員たちは新しいオフィスをとても喜んでくれたという。

そんなたくさんの工夫が込められたwevnalのオフィスだが、磯山氏はこのオフィスを「クライアントのビジネスを成功に導くための企画本部」と表現した。

「クライアントとのコミュニケーションを最も大切にしている会社です。その場で最大限のパフォーマンスを発揮するために企画会議や準備をする場所がオフィスだと思っています。ある人は仲間に意見を求めに、ある人は1人で没頭して作業するために、ある人は空間の癒し効果や仲間とのコミュニケーションでリフレッシュするために……。そのような場所にこのオフィスがなっていったら素敵なことだと思います」(磯山氏)

テレワークが進み、会社に行く回数が大幅に減ったという読者も少なくないだろう。実際に筆者もテレワークを活用してから、プライベートの時間が確保できるようになったり、朝起きる時間を遅くできたり、テレワークに多くのメリットがあるように感じられる。

しかしその一方で、イケア・ジャパンの調査によると、コロナ収束後に「出社したい」と回答した人は89.8%にも上るという。 テレワークを経験している世代だからこそ、「あえて出社したい」理由ができたことには大いにうなずける。 今後、wevnalのように出社することに意味を持てる、出社もテレワークも強制しない会社が増えていくのかもしれない。