キリンホールディングス(キリン)と明治大学(明大)は9月7日、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形を開発したことを発表した。

またキリンは、同技術を搭載したスプーンとお椀の「エレキソルト」デバイスシリーズを開発し、塩分を控えた食事をセットで提供して食事満足度を評価する実証実験を、ノルトおよびオレンジページと共同で9月から開始すること、そして同実証実験を経て2023年に国内で発売する計画であることも併せて発表された。

同成果は、明大 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科の鍜治慶亘大学院生、同・宮下芳明教授、キリンの共同研究チームによるもの。今回のエレキソルトの技術に関する詳細は、XRに関する全般を扱う学術誌「Frontiers in Virtual Reality」に掲載された。

厚生労働省が2019年に発表した「国民健康・栄養調査」によれば、20歳以上の日本人は1日に、男性で10.9g、女性で9.3gの食塩を摂取しているという。WHO(世界保健機関)は2012年に発表したガイドラインにおいて、食塩摂取基準は1日に5.0g未満と発表しており、そのおよそ倍という、食塩摂取量の多さが問題となっている。ただし、近年は多くの人がそのことを意識するようになっており、健康志向の高まりから、日本の減塩・無塩食品市場が拡大を続けているという。

しかし減塩食は「味が薄い(塩気が足りない)」という課題があり、実際にキリンが首都圏在住の4411名(40~79歳男女)を対象として2021年6月に実施したWebアンケートでも、塩分を控えた食事(減塩食)を行っている/行う意思のある人の内、約63%が減塩食に課題を感じており、その内の約8割が味に対する不満であったという。

こうした社会課題に対して、2019年からキリンと共同で、人体に影響しないごく微弱な電流(電流0.1~0.5mA)を用いて、疑似的に食品の味の感じ方を変化させる「電気味覚」の技術の活用について研究を進めてきたのが明大の宮下教授の研究室であり、その成果として、減塩食の味わいを増強させる独自の電流波形を開発することに成功。減塩をしている/していた経験のある人を対象にした臨床試験において、減塩食を食べたときに感じる塩味が約1.5倍程度に増強されることが確認されたという。

この約1.5倍という数値は、一般食品を模したサンプルと、食塩を30%低減させたサンプルでの塩味強度に関する評価の変化値によるもので、現在または過去に減塩をしている/していた経験のある40~65歳男女31名が参加し、エレキソルトの技術を搭載した箸を用いて、食後に試験用食品を食した際に感じた塩味強度をアンケートしたところ、31名中29名が「塩味が増した」と回答したという。

  • 独自開発の電流波形を用いた際の塩味増強効果

    独自開発の電流波形を用いた際の塩味増強効果(対象者31名の試験結果) (出所:明大Webサイト)