熊本大学は8月26日、2010年度から環境省が開始した全国10万組の子どもとその両親が参加する大規模な疫学調査である「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の中から抽出された、約3600人の子どもの血中ビタミンD値と成長率(身長の伸び)のデータについての解析を実施した結果、ビタミンDが欠乏している子どもでは年間あたりの身長の伸びが0.6cm小さいことが明らかになり、また冬における屋外活動の少なさがビタミンD欠乏の因子である可能性が示されたと発表した。
同成果は、熊本大大学院生命科学研究部の倉岡将平助教、エコチル調査南九州沖縄ユニットセンターの加藤貴彦センター長らの共同研究チームによるもの。詳細は、栄養学に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Nutrients」に掲載された。
ビタミンDは、腸管からのカルシウムを吸収するために必須のビタミンで、食事からの摂取に加え、日光浴により皮膚でも産生される。ビタミンDが不足するとカルシウムを十分に吸収できないため、小児では「くる病」、そして成人では「骨軟化症」を発症してしまうほか、潜在的なビタミンD欠乏は骨粗鬆症や骨折のリスクを高めることも知られている。
また近年、ビタミンDは骨に関する作用だけでなく、免疫機能や心疾患、糖尿病、がんなどと強い関連を持つことも明らかにされてきているほか、小児では、低身長の子どもで血中ビタミンD値が低いことが報告されていたという。ただし、低身長に限らない標準的な小児における血中ビタミンD値と成長についての関連は、これまで明らかになってはいなかったともする。
そこで研究チームは今回、エコチル調査の詳細調査に参加した中から、正期産で基礎疾患のない3624人の子どもを対象として、研究を行うことにしたという。
具体的には、2歳時と4歳時の身長および体重、4歳時に採取された血液から血中ビタミンD濃度、さらに4歳時の質問票(2015~2018年に実施)から屋外活動(外遊び)の時間を抽出し、その関連についての解析が実施された。
その結果、全体の23.1%がビタミンD不足(血中ビタミンD濃度が20ng/ml未満)であることが判明。さらに、全体の1.1%がビタミンD欠乏(血中ビタミンD濃度が10ng/ml未満)であることも明らかにされた。