パナソニックコネクトは8月30日、同社の100%子会社の米Blue Yonder(ブルーヨンダー)の新CEOに7月11日付で就任したDuncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)氏の就任会見を開催した。
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(左)パナソニックHD 代表取締役社長 CEOの楠見雄規氏、(右)Blue Yonder新CEOのDuncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)氏
パナソニックコネクトが2021年に累計8633億円で買収を完了したBlue Yonderは、2021年の年間売上高は11億ドルを超え、SaaSの年間経常収益は4億7500万ドルだった。従業員数は約6000人を超える。同社はAI(人工知能)を活用し、需要・供給の変化をリアルタイムで把握し、現場作業の最適化や省人化を図るサービスを製造業や小売業向けに展開している。顧客は、食品・日用品大手の英ユニリーバなど欧米企業を中心に世界で3000社を超えている。
2022年2月から暫定CEOを務めたMark Morgan(マーク・モーガン)氏の後任となるアンゴーヴ氏は、7万社を超える企業の顧客を抱える業界クラウドアプリケーション企業である米インフォアなどで25年以上の間、企業向けソフトウェアとサプライチェーンビジネスを経験。
インフォアでは社長にも就任し、6000万人以上のサブスクリプションユーザーを抱えるクラウド企業へと成長させた。これまでに米オラクルと米Retekでも上級管理職を務め、現在もHoneywellの取締役を務めている。また同氏は、テクノロジーに焦点を当てたプライベートエクイティファンドであるArcspringの共同創始者でもある。
アンゴーヴ氏は就任会見で、「世界的なパンデミックやウクライナ戦争など、前例のない課題が発生する中、サプライチェーンや投資も世代交代が必要になってきている。Blue Yonderとパナソニックのテクノロジーを融合させ、サプライチェーンを次世代のものにしていく。Blue Yonderの一員になれたことを嬉しく思うし、これからの成長にワクワクしている」と笑顔を見せた。
Blue Yonderが目指すのは「オートノマス(自律的な)サプライチェーン」だ。「従来のようなポイントソリューションやノード(結節点)におけるソリューションから、各ノードにわたり同期されたエンドツーエンドの最適化が図れるソリューションになる必要がある」と、アンゴーヴ氏は指摘する。
また、従来のサプライチェーンでは、内部データや内部要因による過去データなどに基づく後ろ向きの意思決定が主流になっているが、自律的なサプライチェーンを目指すためには、複数企業にまたがる意思決定が必要になる。また、「遅すぎて意味をなさなくなったデータからの分断された意思決定ではなく、リアルタイムのデータと洞察に基づくエッジと連携した意思決定を行うべき」(アンゴーヴ氏)という。
オートノマスサプライチェーンを実現するBlue Yonderのソリューションは、エッジに対応したサプライチェーンが、イベントや変化をリアルタイムに検出する。コントロールタワー(管制塔機能)が、サプライチェーン上で起きている事象を把握し、影響を予測、認知的な評価を行って解決策を判断するという。
また、AIがシナリオを評価し優先順位と目的に基づいて最適な意思決定を行い、生産計画の修正や物流を調整し、新しい計画を策定できる。「3000社を超える顧客と数十年にわたって培ってきたサプライチェーンの専門知識や経験を投入し、業界をリードするプラクティスを提供していきたい」(アンゴーヴ氏)
就任会見に登壇したパナソニックHD 代表取締役社長 CEOの楠見雄規氏は「外的環境の変化によってビジネスが滞ってしまってはならない。サプライチェーンを止めないことは、ビジネスを止めないことと同義。パナソニックコネクトが唯一無二の会社に成長していくためにも、Blue Yonderのさらなる発展は欠かせない。アンゴーヴ氏に大きな期待を寄せている」と述べていた。