ガートナージャパンは8月4日、地政学リスクが今後の日本企業によるソフトウェア/クラウド・サービスなどのIT調達に重大な影響をおよぼすとの見解を発表した。地政学リスクは一般的に、特定地域の政治的・軍事的緊張の高まりが周辺地域や世界におよぼす影響を指す。2022年はロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、同リスクがあらためて注目される。

日本企業が利用するSaaS(Software as a Service)などのクラウドサービスや、ERPの業務ソフトウェアの多くが海外ベンダー製であり、海外拠点のITシステムも現地のITベンダーの支援を受けている場合が比較的多いことから、同社は同リスクの影響は免れないと指摘する。

そのうえで、ソフトウェアやクラウド・サービスを調達する際には、「コスト」「データ保護」「バージョンアップ/サポート」の3つの観点から、自社への影響を評価し、ベンダーと必要な交渉をすべきだという。

コストについては、為替、人件費、エネルギーコスト、物価上昇を背景とする価格上昇が挙げられる。

データ保護に関しては、情報資産を保護するために国外への重要データの持ち出しを規制する機運が高まる中で、国によってはユーザー企業であってもデータの持ち出しや地域間のデータ・アクセスが制限される場合がある。

バージョンアップ/サポートでは、特定地域でのベンダーの開発/サポート・エンジニアの撤退や、それに伴うサービス・レベルの低下も懸念される。同社によれば、ベンダーが現地エンジニアを引き上げ、リモート対応に切り替えた地域では、データ保護の問題もあり、ベンダーのサポート担当が顧客のシステム環境へ直接アクセスし障害原因を突き止めるといった支援が受けられなくなる例もあるという。

同社アナリスト バイス プレジデントの海老名剛氏は、「国内ではベンダーとの契約交渉に不慣れなITリーダーが一定数みられ、契約に先立って十分な交渉がなされない場合も散見される。しかし、地政学リスクの影響が大きくなる今後は、ベンダーとの交渉の重要性はさらに増す。まずは交渉のための十分な時間を、調達計画に盛り込むことが大切だ」と述べる。