競争優位性を構築する」に、パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニーでエグゼクティブコンサルタント/エバンジェリストの一力知一氏が登壇。「パナソニックが目指すオートノマスサプライチェーンへ向けて」と題し、その取り組みを語った。

製造業において、適切なサプライチェーンの構築が非常に重要であることは言うまでもない。だが、この当たり前のことを実現するのはなかなか難しい。作る、運ぶ、売るといったそれぞれのプロセスをそれぞれ可視化、最適化していく際のハードルは高いからだ。この課題に真っ向から挑んでいるのがパナソニックである。同社はサプライチェーンを最適化し、オートノマスサプライチェーンを目指す取り組みに力を入れている。

7月22日に開催されたセミナー「TECH+フォーラム 製造業 DX Day 2022 Jul. 持続的な 競争優位性を構築する」に、パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニーでエグゼクティブコンサルタント/エバンジェリストの一力知一氏が登壇。「パナソニックが目指すオートノマスサプライチェーンへ向けて」と題し、その取り組みを語った。

パナソニックが目指すオートノマスサプライチェーンとは

一力氏は冒頭、セミナーの主題である「持続的な競争優位性」について取り上げた。「1度だけのDXではなく、持続的であること」「DXを実施すること自体ではなく、いかに競争優位性につながる取り組みを行うか」が重要だと自身の考えを示す。そして、パナソニックは今まさに「デジタルの力を使って、競争力を上げることに取り組んでいる最中だ」と言う。

競争力を高めるために同社が着目したのがサプライチェーンだ。社としてサプライチェーンマネジメントを行うことをすでに表明しており、目指す姿として「オートノマスサプライチェーン」の実現を掲げている。

オートノマスとは、自律を意味する。一力氏はこれを人間の自律神経に例える。我々の身体にある心臓は、自分の意志で動かそうとせずとも、勝手に動く。内臓もそうだ。自律神経があることで、それぞれをつなぎ、個々の動きが最適化されている。不調になれば、痛みや熱を出すといったかたちでアラートを発し、リスクを知らせる。身体を回復させるため、動かす機能は動かし、休ませるべき機能は休ませることで、全体を最適化しているわけだ。

「パナソニックがサプライチェーンで行おうとしていることは、まさにこの状態。個々の機能が、個別に最適に動いている状態をつなげ、全体最適化することなのです」(一力氏)

さらに同社では、IE(インダストリアルエンジニアリング)とDXを融合させることで、データ駆動型の経営変革をしていくことも掲げている。一力氏は、「デジタルを導入する際には業務プロセスの標準化が必要です。しかし、これは長年言われていますが、言うほど簡単ではありません」と強調。自身の経験も踏まえ、製造業界全体の課題に言及した。

では、パナソニックは、これまでに培ってきたIEの手法とデジタルをどのように組み合わせ、サプライチェーンの最適化に取り組んでいるのだろうか。

“バッファ”が生み出す課題

サプライチェーンの現場で実現したい姿は「必要なものが必要な時に必要な量ある」ことだ。しかし、大前提である“必要な量”を決めることは「非常に難しい」と一力氏は言う。何がいつ、どれくらい必要なのかは需要予測から判断するそうだが、消費者のニーズだけではなく、サプライチェーンは、それぞれの機能がお互いトレードオフになることがあり、決定は容易ではない。仮にいったん決まったとしても、配送などのタイムラグがあるため、必要なものは時間とともに変化していく。

「結果として現場では、変動が大きい状況に柔軟に対応するため、リードタイムなどのバッファを取らざるを得ない状態になります」(一力氏)

売る側は品切れを防ぐため多めに発注をかける、その要望にいつでも応えられるよう、運ぶ側は多めにリソースを確保せざるを得ない、結果として作る側は余分に生産してしまう。バッファは不要かと言うとそうではなく、「バッファがないと、(いざというときに)サプライチェーンは切れてしまう。問題は、バッファが大きく複雑になったこと」(一力氏)なのだ。

  • サプライチェーン現場の課題

このバッファの存在は、企業にとって大きな課題となる。バッファの種類と量が増えれば増えるほど、コントロールが難しくなる上、“本当に必要な”バッファかどうかが分からなくなってしまうからだ。余分なバッファが多い状態でサプライチェーンをつないでも、サプライチェーンの最適化は望めない。

パナソニックが目指すオートノマスサプライチェーンは、バッファそのものを個別に管理するのではなく、サプライチェーン全体で管理するという考え方だ。現在は、個別の最適化を行っているところであり、まずはバッファの適正量を定量的にコントロールする取り組みを実施したという。