名古屋大学(名大)と雪印メグミルクは7月29日、雪印メグミルクが保有する乳酸菌「ラクトバチルス プランタラム SBT2227株(SBT2227株)」を食べることで睡眠が促進されることを、ショウジョウバエ(以下、ハエ)を用いた研究で発見したことを発表した。
同成果は、名大大学院 理学研究科附属 ニューロサイエンス研究センターの石元広志特任准教授、同・神太郎研究員、同・村上弘樹研究員、同・大学院 理学研究科の上川内あづさ教授、雪印メグミルクの共同研究チームによるもの。詳細は、生命科学・物理・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。
睡眠不足およびその蓄積である「睡眠負債」は、生活や仕事のパフォーマンスの低下、脳の働きの低下、糖尿病などの生活習慣病におけるリスクの増加など、心身にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られている。また、日本人の睡眠時間は短い傾向にあるとされており、睡眠は日本において社会的な関心が高い健康課題の1つとなっている。
近年、乳酸菌などの経口摂取や乳酸菌を含む腸内細菌の存在が、ヒトをはじめとする動物の健康に、さまざまな影響を及ぼすことが明らかにされてきた。そこで研究チームは今回、この睡眠の課題を解決する手段として乳酸菌に着目することにしたという。
そして今回の研究においては、睡眠においてヒトと多くの点で共通する行動・分子機構を備えている、ヒトと同様に腸内に微生物が共生しているなどの理由から、ハエを研究材料に用いることにしたとする。
ラクトバチルス プランタラムは発酵食品などに多く含まれている乳酸菌であり、またハエの主要な腸内細菌でもあることから、今回の研究では、同乳酸菌のSBT2227株をハエに食べさせ、睡眠行動についての詳細な評価を実施。その結果、夜間開始時の睡眠量が増えることと、寝入るまでの時間が短くなることが確認されたという。