コロナ禍に対応するための急速なデジタル化や、それに伴う新制度導入など、バックオフィス業務は常にさまざまな変化にさらされている。これからのバックオフィスはどうなっていくのだろうか。

7月7日、オンラインで開催された「TECH+セミナー バックオフィス業務のデジタル化 Day Jul. ~バックオフィスから次の一歩を」に経済ジャーナリストの荻原博子氏が登壇。「バックオフィス業務の次の一歩」として、これからのバックオフィスと、業務に携わる人に求められることをテーマに基調講演を行った。

  • 経済ジャーナリスト 荻原博子氏

世界最大の“職場”はインターネットにある

バックオフィスはどの企業にとっても欠かせない存在である。だからこそ、荻原氏は「しっかり構築すれば会社に多大なメリットを与える」と言う。重視すべきは「効率性」だ。GAFAに代表されるインターネットのプラットフォーマーたちは比較的小規模な体制で効率良く利益を上げていると指摘し、「会社経営はもちろん、バックオフィス業務でも目指すべきは効率の向上ではないか」と述べる。

効率を追求するにあたって、荻原氏が選択肢になり得ると提案するのがクラウドソーシングだ。

この分野の大手である米国のUpworkには、1000万人のフリーランサーが登録し、400万社がスキルのあるフリーランサーに仕事を依頼しているという。同社はTIME誌の「2022年最も影響力のある企業100」に選ばれており、「企業におけるフリーランスの活用」「スキルある人材のフリーランスという働き方」の広がりを裏付けているとも言える。これを踏まえ、荻原氏は「世界最大の“職場”はインターネットにある」と語る。日本でもランサーズやクラウドワークス、ココナラなどのクラウドソーシングサービスが出てきており、同様の傾向が見て取れると言えそうだ。

「今後クラウドソーシングは、一部の人が使うものではなく、大々的にバックオフィスサービスでも使われていくのではないでしょうか」(荻原氏)

クラウドソーシングに期待できるメリット

バックオフィス領域での目下の課題は、2023年10月に導入されるインボイス制度だろう。インボイス制度とは消費税の仕入税額控除を受けるための制度で、同制度の条件を満たした請求書(適格請求書)を発行するためには「適格請求書発行事業者」の登録が必要だ。

荻原氏は、インボイス制度導入に至るまでの経緯を説明しながら、同制度により複数の税率での課税ができるようになるといったメリットを紹介する。

だが、それでも経理担当者にとって負担が増えることに変わりはない。「煩雑な作業が増えるため、それに対応できる仕組みを構築しなければならない」(荻原氏)からだ。そこで「クラウドソーシングの仕組みを活用することを検討しては」というのが荻原氏の提案である。インボイス制度への対応に限らず、「バックオフィスで人材が足りないときはクラウドソーシングのようなサービスを利用して、専門とするプロに任せるのが良いのではないか」と見解を示す。

クラウドソーシングのメリットは、プロの力を必要なときに活用できるということだけではない。荻原氏は、経済的なメリットもあると見ている。

「時給ベースでしっかりした仕事をしてもらえるのであれば、人を雇うよりもコストが下がるかもしれません」(荻原氏)。

一般に、会社員の健康保険、厚生年金、雇用保険といった社会保障は労使折半であり、企業側は「思うように人を雇えない時代になっている」(荻原氏)のが実情だ。その解決策の一つとして、「いろいろなアウトソーシングの仕組みをうまく使うことで、企業の利益もそれなりに確保できるでしょう」と荻原氏は説いた。