東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)および同大 大学院理学系研究科、京都大学(京大)、国立天文台(NAOJ)の4者は7月13日、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」(HSC)による多波長掃天観測と、発見後にさまざまな望遠鏡を用いて詳細な撮像・分光を継続する追観測の2つのパートから構成されている「MUSSESプロジェクト」において、「超高輝度超新星」と同等の明るさを持ち、より急速に増光する新型の突発天体の発生直後を捉えることに成功したことを発表した。
同成果は、Kavli IPMUのジャン・ジアン特任研究員(現・NAOJ 特任研究員)、京大大学院 理学研究科の前田啓一准教授、同・宇野孔起大学院生、東大大学院 理学系研究科 附属天文学教育研究センターの土居守教授(KavliIPMU 客員上級科学研究員兼任)、NAOJの守屋尭助教、Kavli IPMUの野本憲一客員上級科学研究員ら、24名の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。
近年、短時間で劇的な変化が起きる高エネルギー現象(突発天体)の観測と研究が進み、これまで知られていなかったまったく新しいタイプの突発天体が数多く存在することが明らかになってきた。
そうした中に、非常に明るい上に短時間でその明るさを変える特異な突発天体があり、研究チームは、それを「Fast Blue Ultra-luminous Transient(FBUT)」と呼ぶことにしたという。突発天体の正体に迫る上では発生直後の増光の様子などの情報が鍵となるが、FBUT天体はあまりにも急激に明るくなるため、その初期の急増光をとらえることが困難とされていた。
そうした中、すばる望遠鏡のHSCを用いて、さまざまな突発天体の発生直後の様子をとらえることを目的として2014年に立ち上げられたのがMUSSESプロジェクトで、2020年12月の同プロジェクトによる連続観測の際には、20個の急速に増光する突発天体が発見された。
そのうちの1つである「MUSSES2020J(AT2020afay)」は、まだ増光する前の12月11日の段階で発見され、観測中に急速に明るさを増していったとする。その後の追跡観測により、同天体が1.063という非常に大きな赤方偏移を持つ遠方の天体であること、そのことから通常の超新星の約50倍の明るさだったことなどが確かめられたという。