金沢大学は7月8日、甲殻類に由来するキチンのナノ結晶を、独自開発した3次元原子間力顕微鏡(AFM)により分子レベルで観察することに成功したことを発表した。

同成果は、金沢大 ナノ生命科学研究所(金沢大 NanoLSI )のアイハン・ユルトセベル特任助教、同・福間剛士教授、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のマーク・マクラクラン教授、フィンランド・アールト大学のアダム・フォスター教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、材料科学や生物医学などのナノスケールからマイクロスケールの研究を扱った学術誌「Small Methods」に掲載された。

キチンはカニやエビの殻、そのほか菌類などに多量に含まれる多糖類のナノ結晶であり、比較的高い強度を有し、毒性も非常に少ないことから再生可能な天然資源の1つとして知られており、ドラッグデリバリーシステムのような生体工学材料への応用など、さまざまな分野でナノ材料としての利用が模索されている。

しかし、キチンの分子レベルの構造は未解明な部分が多く、なぜ比較的高めの高度を有するのかや毒性が少ないのかといったことはよく分かっていないほか、キチンを実際に材料として用いる上で、水分子に含まれる酸素と反応させるメカニズムを理解するためにも、キチンの表面と水分子の相互作用に関する詳細な仕組みを解明する必要があったという。

これまで福間教授らの研究チームは、物質の表面構造を分子スケールで観察できるAFMや、物質/水の界面構造を空間的に観察できる3次元AFMを開発してきた経緯があり、今回の研究では、それらの技術を用いて水中におけるキチンの観察を行い、その表面の化学的性質や水分子との反応メカニズムについての解析を行うことにしたという。