九州工業大学(九工大)は6月28日、「準結晶」の強磁性秩序相における磁気ダイナミクスを理論的に解明すると同時に、準結晶における「非相反磁気励起」と、「近似結晶」における「非相反マグノン」を発見したことを発表した。

同成果は、九工大大学院 工学研究院 基礎科学研究系の渡辺真仁教授によるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

電子の磁気モーメントが結晶全体にわたって秩序化する磁気長距離秩序が形成されることは、鉄製の磁石を例に取ればわかるように、周期結晶(通常の周期性の構造を持った結晶)ではよく知られているほか、磁気秩序相における励起状態は、「マグノン」という量子化された波として振る舞うこともよく知られている。しかし、3次元準結晶(周期結晶では許されない回転対称性を有する構造を持つ結晶)においては、磁気長距離秩序が存在するか否かは長い間未解明であり、どのような磁気励起を示すかは、よくわかっていなかったという。

このような背景のもと、2021年に発見されたのが、希土類原子のテルビウムを含む準結晶における強磁性長距離秩序で、理論計算による磁気構造も示されたことから、研究チームは今回、そのテルビウムを含む準結晶の強磁性秩序について理論計算を実施することにしたとする。