京都大学(京大)と東京都医学総合研究所(都医学研)は、ヒトと同じ昼行性霊長類のコモンマーモセットでは、免疫系の「ケモカイン」を制御する遺伝子の1つである「CXCL14」は夜間に強く表皮細胞から分泌され、表皮に侵入した細菌のDNAに結合し、これが近傍の免疫細胞の一種の樹状細胞に取り込まれ、DNAセンサー「TLR9」を介して自然免疫を活性化し、病原体の過剰増殖から皮膚を保護しているという、皮膚の生体(概日)リズムが抗菌免疫を制御する仕組みを解明したと発表した。

同成果は、京大大学院 医学研究科の辻花光次郎大学院生、同・岡村均研究員(京大名誉教授)、東京都医学総合研究所(都医学研)の種子島幸祐主席研究員、同・原孝彦プロジェクトリーダー(幹細胞プロジェクト)らの共同研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

皮膚には複数の役割があるが、最大の免疫器官という役割も担っており、病原性の細菌やウイルス、毒物といった体外の異物から身体を守る最前線として働いている。

ヒトをはじめとする地球上の生物には、自転に伴って生み出される昼夜のリズムに同調する概日リズムを有していることが知られており、皮膚においても、概日リズムの中核をなす時計遺伝子の発現リズムが観察されているが、皮膚の免疫機能がどのような機能を司っているのかは、まだあまり良く分かっていなかったという。

そこで、概日リズムの分子機構を研究する京大の研究チームは今回、大部分が均一な細胞で構成される足底のマウス表皮組織に着目し、レーザーマイクロダイセクション法を用いてさまざまな時間で切り出し、遺伝子発現を網羅的に解析することにしたという。その結果、ケモカイン制御遺伝子の1つであるCXCL14が、生体リズムに沿った著明な発現変動を示すことが見出されたとする。

一方、幹細胞におけるケモカインの作用を研究する都医学研の研究チームは、培養した樹状細胞を用いてCXCL14の機能を研究。CXCL14が細菌由来の非メチル化DNAと結合し、樹状細胞のTLR9を活性化するという現象が明らかにされたほか、CXCL14を欠損したマウスを作成し、生理機能の追求が行われたという。