九州大学(九大)は6月2日、ひきこもり者(6か月以上自宅にとどまり続ける社会的ひきこもり状況にある状態)の血液中の代謝物や脂質の測定により、ひきこもり者に特徴的な血液バイオマーカーを発見したことを発表した。

同成果は、九大 病院検査部の瀬戸山大樹助教、同・康東天教授、同病院 精神科神経科の加藤隆弘准教授、同・松島敏夫大学院生、同・中尾智博教授、同・神庭重信名誉教授らの研究チームによるもの。詳細は、臨床神経精神医学と神経科学に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Dialogues in Clinical Neuroscience」に掲載された。

日本における「ひきこもり者」の数は100万人を超えているとされるほか、海外でもひきこもり者の存在が示唆されるようになっており、コロナ禍において今後世界的な流行が懸念され、「Hikikomori」への世界規模の対策が望まれるようになってきているという。

これまで、ひきこもりは6か月以上自宅にひきこもるといった特徴に基づいて評価されてきたが、厳密な診断評価法はなく、ましてや、客観的指標で評価しようとする試みはなかった。ひきこもりはうつ病を始めとするさまざまな精神疾患や身体疾患との並存が示唆されているが、詳細はほとんど解明されていない。

研究チームはひきこもり研究外来を立ち上げ、すでにひきこもりに関する国際的な診断評価法を確立してきたほか、質量分析による血しょうメタボローム解析を駆使することにより、血液中のいくつかの代謝物がうつ病の判別や重症度に関連していることを報告し、客観的指標としての血液解析法を確立してきた。

そこで今回の研究では、ひきこもり研究外来において未服薬のひきこもり者41名と年齢・性別をマッチさせた健常者42名を対象に血液メタボローム解析を実施し、ひきこもり者を特徴づける血中成分(バイオマーカー)を探索することにしたという。