量子科学技術研究開発機構(量研機構)は5月27日、国際協力により南フランスで建設中の核融合実験炉「ITER(イーター)」において、日本が担当する、核融合出力を評価するために重要な中性子計測装置「マイクロフィッションチェンバー(MFC)」の製作に必須となる、均一かつ高精度で、5μm±1μmという膜厚を実現する新たなめっき技術の開発に成功したことを発表した。
MFCは、350℃という高温かつ高い放射線線量にさらされる厳しい真空容器内に設置されるため、それに耐える必要がある。技術的な課題は、MFCで用いる信号ケーブルの耐熱性で、350℃の高温や高い放射線量という厳しい環境のため、一般的なゴムやビニールを使用するケーブルは使用できず、無機絶縁物を利用したケーブル(MIケーブル)を使用することになっている。
しかし、真空容器内でプラズマを超高温に加熱させるマイクロ波の影響で、MIケーブルも1000℃近くまで上昇してしまう可能性があることがわかってきており、このままでは破損してしまう危険性が高いため、既存のMIケーブルのステンレス鋼表面に、厚さ約5μm±1μmの銅めっきを施すことで、温度上昇しないように対策を図ることにしたという。
ところが今度は、MIケーブルの硬さが障壁となり、ケーブルの製造時に曲げ伸ばしせずに、ITERの要求仕様である5μm±1μmという薄さで均一に銅めっきを施す技術が存在しないという問題が発生したという。そこで量研機構は今回、高度なめっき技術を有する帝国イオンおよびMIケーブル製作メーカーの岡崎製作所に打診し、2018年度から新たなめっき技術の共同開発を進めてきたとする。
そして今回、新たな回転式のめっき装置の開発に成功。保管・輸送時と同じ輪巻き形状(同じ曲率)でMIケーブルのめっきを施すため、形状を変える必要がなく、まためっき槽の小型化も実現したとする。さらに、同装置を採用することにより、MIケーブルを螺旋状に巻く方式を採用できるため、1m程度からどのような長さのMIケーブルでも、めっきを施すことが可能となったという。