森ビルは5月26日、東京23区内で1986年以降に竣工した事務所延床面積1万平方メートル以上の大規模なオフィスビルを対象に需給動向に関する調査を実施し、その結果をまとめ発表した。

同調査によると、東京23区の大規模オフィスビルの供給量は、2023年、2025年に一定の供給が見込まれるものの、今後5年間の年平均供給量は過去平均を下回る見込みだ。一方、1物件当たりの平均供給量は増加傾向にあり、今後5年間の供給において事務所延床面積10万平方メートル以上の物件が約7割と、引き続きオフィスの「大規模化」が見込まれるとしている。

  • エリア別大規模オフィスの供給割合(左)、2022~2026年の主要ビジネスエリア別供給割合(右) 出典:森ビル

    エリア別大規模オフィスの供給割合(左)、2022~2026年の主要ビジネスエリア別供給割合(右) 出典:森ビル

また、都心3区(千代田区、中央区、港区)への供給割合は今後5年間で75%と、過去10年平均(71%)を超える水準が続き、主要ビジネスエリアを中心とした「都心部へのオフィス集積」が進む傾向にある。

特に、「虎ノ門」「日本橋・八重洲・京橋」「品川」「赤坂・六本木」エリアでの供給増加が見込まれる。同社は「オフィスの大規模化」「都心部へのオフィス集積」の背景として、国家戦略特区制度といった大規模再開発に関する法令改正などが後押しになっていると考える。今後も都心部における大規模・多機能な街づくりの急速な進展が予想されるとのことだ。

また空室率は2021年末で5.6%と、昨年末から1.6pt上昇。都心の主要ビジネスエリアの空室率は5.2%、同エリア内で事務所延床面積10万平方メートル以上の物件では4.5%と、エリアや物件グレードによって空室率の水準に違いが生じている。

吸収量の内訳を見ると、新築物件はオフィス供給(61万平方メートル)の9割弱(52万平方メートル)が吸収されている一方で、既存物件は新築物件への移転などによる解約が先行し、二次空室の埋め戻しに時間を要している様子が見られ、吸収量がマイナスに転じている。特に主要ビジネスエリア以外のエリアではその傾向が顕著という。

また同社が2021年10月に実施した調査結果によると、従業員のオフィス復帰(もしくは引き続きのオフィス勤務)のための課題として、「従業員が魅力的に感じるオフィス空間への改善・改修」や「従業員の通勤への負担・抵抗感の軽減」が上位に挙がっている。今後はさらにハード・ソフト両面で企業の新たな働き方に寄与する商品力を備えた物件に、企業のオフィス需要が集まる傾向がより強くなるものと同社は予想している。