東北大学は5月24日、疲労の軽減や筋力回復に効果があるとして、トレーニング中や試合後などにおける使用者の多い着圧サポーター(コンプレッション・サポーター)が筋力回復を促進するかどうかについて、メタ解析を含むシステマティックレビューを実施したところ、使用してもトレーニング中・トレーニング後の筋力回復には効果があるとはいえないということが示されたと発表した。

同成果は、東北大大学院 医工学研究科 健康維持増進医工学分野のネギヤシ・ヤノシュ特任助教、同・永富良一教授(東北大大学院 医学系研究科 運動学分野兼務)に加え、オランダ・グローニンゲン大学、英・セント・メリーズ大学、独・ポツダム大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、スポーツ医学と運動に関する全般を扱う学術誌「Sports Medicine」にオンライン掲載された。

着圧サポーターは、筋肉や関節に一定の圧力をかける装着具で、ケガの予防や疲労の回復に効果があるとされてきた。特に疲労の軽減や筋力回復を目的としたトレーニング中や競技後における着圧サポーターの使用が近年、活用されるようになってきているという。

しかし、運動後の筋力回復に対する着圧サポーターの有益な効果があるか否かに関する結論は、実はまだ出ていないという。そこで研究チームは今回、一般化逆分散モデルを含むメタ解析によるシステマティックレビューを実施し、その有効性の判断を行うことにしたとする。

メタ解析とは、過去に行われた、複数の独立した研究のデータを統合して、統計的手法を用いて解析する方法のことで、個々の研究の実施条件を加味して結果に重み付けをし、報告された全体として効果があるかどうかを判別する手法とされている。そのメタ解析において、個々の研究の効果量を計算するための最も信頼性の高い統計手法が一般化逆分散モデルであり、サンプルサイズに応じて各研究の重みを調整することで、プールされた効果推定値の不正確さを最小化するというだという。

今回の研究では、5つのデータベース(PubMed、SPORTDiscus、Web of Science、Scopus、EBSCOhost)において体系的な文献検索が行われ、350人の健常者を含む19のランダム化比較試験からデータが抽出され、メタ解析が実施された。

標準誤差に関して重み付けがされた試験間標準化平均差が集計され、サンプルサイズで補正して全体の試験間標準化平均差を算出。運動の種類、着圧サポーターを貼る部位とタイミング、運動終了からその後の検査までの時間を考慮した結果、トレーニング中やトレーニング後に着圧サポーターを装着しても、運動後の筋力回復を促進するとはいえないことが示唆されたという。

これまで着圧サポーターは、ケガの予防や疲労の回復に効果があるとされてきたことが、今回の研究結果からは、少なくとも疲労回復に効果があるとはいえないことが示されたと研究チームでは説明しており、今回の研究によって、疲労を残しにくい新しいトレーニング方法を開発する必要があることが示されたとしている。

  • 運動後の筋力回復に着圧サポーターは本当に効果的かどうかが解析された

    今回の研究では、運動後の筋力回復に着圧サポーターは本当に効果的かどうかが解析された。その結果、筋力回復には効果があるとはいえないということが示されたという (出所:東北大プレスリリースPDF)