京都大学(京大)は5月20日、CO2とギ酸の酸化還元反応を可逆的に触媒する「Methylorubrum extorquens AM1」という植物葉上共生細菌由来のギ酸脱水素酵素「FoDH1」の電子移動メカニズムを解明したと発表した。
同成果は、京大 農学研究科の宋和慶盛助教、同・吉川達偲大学院生(研究当時)、同・鈴木洋平大学院生、同・北隅優希助教、同・白井理教授、京大 産官学連携本部の加納健司特任教授、大阪大学の牧野文信 招へい准教授、同・宮田知子特任准教授、同・難波啓一特任教授、同・田中秀明准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemical Communications」に掲載された。
CO2を再資源化あるいは回収する技術(CCSU)の研究開発が、世界中で進められている。研究チームが着目しているのが、高温高圧条件で効率良く機能する一般的な無機触媒ではなく、生体触媒の酸化還元酵素で、同酵素は、常温常圧中性において最も効率良く機能することが特徴だという。
CO2からギ酸への還元(=CO2再資源化)を触媒する酵素として、植物葉上共生細菌Methylorubrum extorquens AM1に由来するギ酸脱水素酵素FoDH1が存在する。同酵素は酸素耐性を有しており、生体触媒を用いた新たなCO2再資源化に向けて期待されている。
研究チームはこれまでの研究で、FoDH1が直接的に電極と電子移動することを実証済みで、この反応メカニズムを「直接電子移動型酵素電極反応」(DET型反応)と呼び、酸化還元酵素のおよそ0.01%のみが実現できるユニークな反応様式としている。
DET型反応は、従来の反応系とは異なり、酵素-電極間の電子移動を仲介する電子伝達メディエータが必要ない。そのため、電子移動に伴うエネルギーロスを最小限に抑えることができる理想的な反応として注目されている。ところが、FoDH1の立体構造の詳細は明らかになっておらず、酵素内の電子移動メカニズムは不明だった。